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2023.03.30

米半導体業界で成功してきた連続起業家から今、学べることとは?

テックポイント・インク社長兼CEO 小里文宏

2023年、世界はどのように変わっていくのか。コロナ禍は沈静化に向かうも、地政学的不安は増し、経済はリッセッションの文字がちらつく。Forbes JAPAN2月号では、日本、そして世界で活躍するさまざまな業界のNo.1「36人」に「100の質問」を投げかけた。

国際情勢、テクノロジー、ビジネス、金融など100の答えが今年の100の変化を示す。不透明な景況感の中で起業をためらう人も少なくないはずだ。米半導体業界で成功してきた連続起業家から今、学べることとは?


小里文宏(写真)がシリコンバレーで起業家になった理由は一風変わっている。娘が生まれたのを機に、その将来を案じて収入を増やして安心させたいと考えたからだ。当時、米リコーで半導体事業を担当していた彼はお金に困っていたわけではない。

「非常に心配性なので、何かしないとまずいなと思ったのです」と、穏やかに笑う。

生活の安定を目的に起業するのは珍しいが、「(会社員としての)安定は先が見えていた。それに営利組織である企業は利益を上げ続ける必要がある」と小里は説明する。1995年にCD-ROM装置用の制御ICを開発する会社を創業。97年にはディスプレー用半導体メーカーを創業して、2006年にはナスダックに上場。

気づけば連続起業家だっだ。現在は12年に創業した、HD監視カメラシステムと自動車用インフォテイメントシステムを対象としたHDビデオ接続技術を開発するファブレス半導体メーカー「テックポイント・インク」のCEOを務めている。

スマート化する世界を先読みしてトレンドの先端に立ってきた小里だが、「心配性」であること以外に起業の理由をもう一つ挙げる。それは、「自分が欲しいから」だという。HD監視カメラシステム用の半導体を開発しているのも、暮らしの安全を大事にしたいからだ。そして、もしかすると他の人も欲しいのではないか、と想像することである。

テック起業家でありながら、小里からはいい意味で人間臭さが感じられる。彼はテクノロジーの進化についてこう語る。「ヒトとテクノロジーを比べればいいのです。機械と人間。人間がまだ勝っているところはどこか?機械はそこまで進化できるはずです」


小里文宏◎テックポイント・インク社長兼CEO。リコー勤務の1980年代に米国半導体事業担当となり、90年代にシリコンバレーで連続起業。2012年にテックポイントを創業した。

文=フォーブス ジャパン編集部/井関庸介 写真=能仁広之

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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