プラントベースのアメリカンクッキーを製造・販売する「ovgo Baker」(OVGO社)の創業者・溝渕由樹は、こう振り返る。
「創業当初から、ヴィーガンや食品アレルギーのある方だけでなく、それ意外の方々にも買っていただきたいと考えていました。でも、“プラントベースっておいしくないのでは?”という先入観を持つ人も多く、苦戦していました」
その突破口となったのが、Z世代だった――。
本連載「OVGOの軌跡」では、創業者の溝渕へのインタビューを中心に、OVGOの成長の軌跡を辿る。第3回となる今回は、同社が大きく飛躍するきっかけとなった原宿店の、人気の秘密を探る。
>>第2回 日本の飲食店初の「B Corp」 世界基準のクッキーブランドとは
2020年12月、「ovgo Baker」はラフォーレ原宿店で2週間のポップアップを開催した。ラフォーレ原宿のターゲットであるZ世代は、味のおいしさやかわいい見た目を気に入り、SNSで拡散してくれた。
これが好評だったため、その後も数カ月おきにラフォーレでポップアップを開催。Z世代を中心としたファンが一気に増えるきっかけとなった。
Z世代のアイデアでつくった原宿店
溝渕は元々、表参道の「青山ファーマーズマーケット」などでプラントベースクッキーを販売していた。その当時クッキーを買ってくれたのは、ヴィーガンや食への感度が高い人が中心で、年齢はミレニアル世代以上だった。しかしその層はターゲットとして狭すぎると考え、溝渕はプラントベースに先入観が少ないであろうZ世代に照準を絞った。そこで、ECショップとして利用しているBASEが提供する、全国の商業施設と出展者をつなげるサービスを活用して、ラフォーレ原宿への出店を決めた。
「若い子たちが手軽に楽しめて、『環境に優しくてかっこいい』というトレンドをつくりたい。多くの人が抱いているヴィーガンやプラントベースに対しての『難しい』『手が届きづらい』というイメージを払拭したいと考えました」
そして、ポップアップの売上が好調なこともあり、2022年3月にはラフォーレ原宿内に常設店「ovgo Baker Meiji St.」をオープンした。このとき、最初のポップアップからブランドのファンになったお客さんが、スタッフや社員としてOVGOに加入してくれることになった。
「ラフォーレ原宿の常設店の店舗づくりをするにあたって、Z世代の彼女たちにもたくさんアイデアをもらいました。内装はトレンドの“韓国っぽ”を意識して、メニューもバナナスピリットやラズベリークリームソーダなど、写真映えするものを新たに開発しました。K-POPを流しながらお店づくりをしたのがいい思い出です」