ビジネス

2023.03.29

「ザ・ゴール」の哲学を汲むAI企業は、サプライチェーン問題を解決できるのか?

ゴールドラット ジャパンCEOの岸良裕司(左)、Onebeat共同創業者兼CEOのイシャイ・アシュラグ(右) 

2023年、世界はどのように変わっていくのか。コロナ禍は沈静化に向かうも、地政学的不安は増し、経済はリッセッションの文字がちらつく。

Forbes JAPAN2月号では、日本、そして世界で活躍するさまざまな業界のNo.1「36人」に「100の質問」を投げかけた。国際情勢、テクノロジー、ビジネス、金融など100の答えが今年の100の変化を示す。 コロナ禍と、ロシアによるウクライナ侵攻で改めて浮き彫りになったサプライチェーン問題。“永遠の課題“を解決すべく、世界で1000 万人が読んだビジネス書の流れを汲むAI企業が解決に乗り出した。


永遠のテーマとはいえ、近年のサプライチェーン問題は世界規模であらゆる業界にとって悩みの種になっている。その特効薬を人工知能(AI)に求める声も多い。だが、イスラエルのAIコンサルティング企業「Onebeat(ワンビート)」のイシャイ・アシュラグCEO(写真・右)はこう釘を刺す。

「AIは“ツール”にすぎません。重要なのは、そのツールをどのように使うかです」

2018年創業の同社は、AIを駆使してサプライチェーンとオペレーションを解決する製品とサービスを小売り企業に提供している。だが、ワンビートには同業他社にはない武器がある。バックボーンとなる理論だ。

じつはアシュラグの義父は、全体最適のマネジメント理論「TOC(制約理論)」の開発者として知られ、世界的人気を誇るビジネス小説『ザ・ゴール』(邦訳:ダイヤモンド社刊)の著者、故エリヤフ・ゴールドラット博士なのである。

彼の理論に裏付けられたワンビートのAI搭載型プラットフォームを使うことで、顧客は店舗ごとのSKU(最小在庫管理単位)をリアルタイムで把握し、需要主導型アナリティクス機能により、適切な店舗に在庫を管理・配送できる。需要予測も立てられ、データを蓄積することで在庫管理のいっそうの最適化も可能だ。

同社は小売業から攻略しようとしている。市場規模の大きさも魅力だが、アシュラグは「最も複雑で難しい業界だからだ」と話す。高い壁だが、乗り越えられたらその後の説得力も違ってくる。『ザ・ゴール』は、企業にとっての究極の目的を問う点が多くの経営者の共感を得た。その系譜を継ぐ企業が高みを目指すのは当然のことかもしれない。


イシャイ・アシュラグ◎Onebeat共同創業者兼CEO。

岸良裕司◎ゴールドラット ジャパンCEO。共にゴールドラット博士の薫陶を受け、TOCを各国の経営者に伝授してきた。

文=井関庸介/フォーブス ジャパン編集部 写真=能仁広之

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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