政治

2023.03.29 08:20

なぜTikTokは、米議会で真剣に議論され、禁止されようとしているのか?

稲垣 伸寿
周CEOは若干40歳。もとから若く見えるアジア系で、スリムということもあり、アメリカでは30代前半、下手したら20代のようにさえ見えるのだろう。

TikTokのメインユーザーはミレニアルやZ世代といった若者であり、公聴会をみていたTikTokユーザーの多くは、ソーシャルメディアに理解を示さず小うるさい話をする頭の固い「老人」たちよりも、自分たちに近くみえるTikTokの若きリーダーに感情移入するものも少なくないであろうことは容易に想像できる。その世代に色濃い、人種差別や外国人差別などマイノリティ差別への反対感情を味方にするという面もあるのだろう。

つまり今後、TikTok側は主に若い世代やユーザーをターゲットにした世論を盛り上げて対抗していくことが想定されているのだろう。周CEOは、たしかに経歴も実績も申し分のないエリートなのだが、立ち振る舞いやルックスなどが世論に与える影響も加味され選ばれたという可能性も高いと筆者は考える。彼がCEOに就任したのは、2021年のことだ。

一方、周氏は全ての質問に対しストレートに答えず、応酬が平行線をたどることも多かったこともあり、結局TikTokと政府の溝は埋まりそうもないという結果になった。筆者の印象としては冷静に真摯に答えているようには見えるが、はっきりと明言しきらなかったことが多いのも事実だ。

この一件で、今後、大統領令ではなく議会で禁止法案が進められるのは確定し、それに対しTikTok側が廃案にするか、骨抜きにするかというロビイングや世論を味方につける活動を行っていくと想像される。

文=重枝義樹

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