「最近起こったシリコンバレー銀行の衝撃的出来事や、UBSによるクレディ・スイスの買収は、暗号資産業界にまったく異なる影響を及ぼしている」と、シウは3月20日香港で開催されたWeb3投資サミットにライブビデオで登壇して語った。「暗号資産は実際に、一部の人々が予測していたようなセーフティネットの役割を果たしつつある」
いうまでもなく、暗号資産はリスクの高い投資先だ。ほとんど規制されていないこの市場の時価総額は、20日時点で、2021年11月のピーク時の約60%を失っている。背景には昨年秋に発生した大手取引所のFTXの破綻などの、複数の企業の転落が挙げられる。
シウは、彼がいうセーフティネットの役割を果たすコインが、これまで安全と認識されていたステーブルコインではなく、ビットコインとイーサであることが判明したとも述べている。CoinGeckoのデータで、ビットコインは20日に9カ月ぶりの高値の約2万8000ドルをつけ、イーサも7カ月ぶりの高値の約1800ドルに上昇した。しかし、第2位のステーブルコインであるUSDCは、3月中旬に発行元のサークルが、シリコンバレー銀行に預けた33億ドル(約4450億円)を引き出せなくなったことで、一時的に米ドルとのペッグを失った。
一方、ライバルのUBSに30億ドルで買収されると報じられたスイスの巨大銀行、クレディ・スイスの株価は、20日に60%近く急落した。同社の苦境は、暗号資産に優しい米国の銀行のシルバーゲートやシグネチャー・バンクの破綻、スタートアップへの主要な貸し手であるシリコンバレー銀行(SVB)の崩壊に続くものだ。
暗号資産は魅力的な代替手段
「このような状況下で、特にビットコインやイーサなどの暗号資産は、伝統的な銀行のリスクを回避して価値を保存するための魅力的な代替手段になった」と、シウはフォーブスの取材にEメールで回答した。「これらの暗号資産が、銀行危機の中で顕著な上昇を遂げたのは、偶然ではない。私たちが今、見ている状況は、一般的なマネーの暗号資産への逃避だと考えられる」香港に拠点を置くアニモカは、銀行危機の「直接的な影響」を受けていないとはいえ、投資先の380社以上の企業の一部は「影響を受けるだろう」とシウは述べた。しかし、彼は、これらの企業の預金は安全であり「重大な問題は起きていない」と述べている。アニモカは以前、シルバーゲートやSVBと取引をしていないことを投資家に伝えていた。
シンガポールの政府系ファンドのテマセクや、セコイア・キャピタルなどの支援を受けるアニモカは、進行中の暗号資産の冬に襲われている。同社の主要プラットフォームの「サンドボックス」を含むブロックチェーンゲームの暗号資産のほとんどは、2021年のピーク時から90%以上も急落している。
(forbes.com 原文)