米国は、原子力発電の初期に大きな成長を遂げた。1960年代には全国各地に原発が建設され、1973年時点で29基の原子炉が稼働し、総発電量は1万6000メガワットを超えた。10年後には60基となり、5万メガワット以上を賄うまでになった。
ところが1979年、ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所が部分的にメルトダウンを起こし、業界は初めて大きな挫折を味わうことになる。この事故により、放射性物質が周辺にわずかに放出された。死傷者は出なかったものの、事故の教訓が監視と規制の強化につながり、原発への反対運動が活発化した。
スリーマイル島の事故以降、1986年にはウクライナ(当時のソビエト連邦)のチョルノービリ原発、2011年には日本の福島第一原発と、世界の原子力発電の発展に重大な影響を与える大事故が発生した。
米国は世界の原子力発電全体に占める割合が2021年時点で29%と、歴史的に世界一の原子力大国であり続けている。国内の電力消費のうち、8%を原子力が担っている。他方で、1965~2000年にかけて急成長した原子力発電は、この20年間成長が止まっている。
テネシー州のワッツバー原発で1996年に1号機が稼働開始して以降、今年に至るまで、米国内で新たに稼働した原子炉はたった1基しかない。2016年に同原発2号機が稼働開始しただけなのだ。
しかし、アトランタを拠点とする米公益大手サザン傘下のジョージア電力が現在、ジョージア州オーガスタの南東にあるボーグル原発で新たに2基の原子炉を稼働させる準備を進めているため、2023年中にこの状況は変わるものとみられる。