引き取りは、動物愛護団体などが開催する譲渡会で行われることが一般的だが、コロナ禍で対面のイベントを開くのが制限され、スムーズに新たな飼い主の元へと渡るのが難しくなっている。
そうしたなかで利用が伸びているのが、オンライン上で愛護団体などの保護犬や保護猫と「里親希望」の飼い主をマッチングするサービス「OMUSUBI(お結び)」だ。
同サービスは、フレッシュペットフードなどを手掛ける「PETOKOTO(ペトコト)」が、2016年12月に開始した。OMUSUBI上には、保護犬や保護猫の年齢や性格、アピールポイント、譲渡費用といった基本情報はもちろん、各団体の理念なども掲載されている。
登録団体数はコロナ禍前の2019年から約250%増加し、現在は280団体を数える。2021年から2022年にかけては譲渡数も1.6倍に増え、累計では2300件に上るという。
ペットを迎える新たな選択肢として成長を続けるOMUSUBIだが、事業責任者の井島七海(いじま・ななみ)は、多くの愛護団体と関わるなかで、保護活動の難しさも目の当たりにしてきた。保護活動に関わる人たち、そしてペットを求める飼い主たちのウェルビーイングを実現するために必要なことは何か、探ってみた。
◤「人とペットのウェルビーング」連載◢
#1 新ペットフードに会員15万人 飼い主も犬も夢中になる理由
#2 「ねこの寿命30歳」を目指す 病気検知トイレのこだわりと進化
#3 人はペットに癒しを「求めすぎ」ている 理想の関係を築くには
#4 犬の本音を見える化 イヌパシーが飼い主の「思い込み」を破る
「殺処分」減少の裏では保護団体への皺寄せも
近年、犬や猫の殺処分状況は改善されている。環境省の発表によると、2021年度の件数は1.4万匹と、前年比40%減となった。その一方で、いくつかの事情が絡み、保護団体の負荷が大きくなっている。一つは2013年以降、地方自治体が「引き取りを拒否」できるようになったことだ。これは安易な飼育放棄を防ぐことを目的に法改正が行われた。また、ペットショップでの生体販売が主流で、保護犬・保護猫を迎える文化はなかなか進まずにいたことも一因だ。
こうした背景から、保護団体に皺寄せが行き、人手や資金不足などが慢性的な課題になっているという。井島は次のように語る。
「保護依頼や相談が団体へ集中し、負荷が偏ってしまっている現状があります。犬や猫との出会いの場を、保護団体さんだけの努力に依存せず、テクノロジーの力でも生み出したい。そうした思いで生まれたのが審査制の保護犬・保護猫マッチングサービスOMUSUBIです」