国内

2023.04.06 08:50

8つのJA組織が団結 スタートアップ支援で日本の農業を守る

荻野:地方に住んで週に1回東京に通うような人なら、農業をしながらリモートで東京の仕事もできますからね。僕らが何かきっかけを作ることができたら、そういう働き方をしている人たちが農業と関わるようにできるんじゃないかと思います。

中道:僕はそんなに知識がないんですけど、農業には誰でも入っていいわけではないという障壁があるイメージなんですが、法律で決まっているんですか?

荻野:法律はありませんが、農業は「継ぐ」のが一般的で、会社を選んで就職するように農業に就職するのは機会として少ないという感じですね。農業系の高校や大学・学部を出ても実家が農家じゃないと始めにくいということもあります。

中道:もったいないですね。

荻野:もったいないです。農家の継承者不足で耕作放棄地が増えて自給率も下がっています。僕が生まれた1965年の自給率は73%、それが今は38%と半分になっています。

これって国のリスクだと思うんです。イスラエルは国土の半分が砂漠の農業には向かない乾燥した国ですけど、テクノロジーを駆使して自給率は90%を超えています。周囲を敵国に囲まれているのでいつ兵糧攻めに合うかわからない。だから政府が意識してリスクヘッジしているんでしょう。僕は日本もそうあるべきだと思っています。

昨年11月に世界の人口が80億人になりました。日本の人口は世界の人口のたった1.5%ですけど、世界中で取引される食糧の10%も輸入しています。日本が自給率を上げて食糧の輸入量が減れば、その分を東南アジアやアフリカなどの十分な食事がとれない世界の子どもたちに届けられるかもしれない。僕らが自給率を上げることは世界貢献にもつながるんじゃないかって思っています。

それに日本の果物や野菜は本当に美味しいので、もっと輸出すればいい。日本の食にはチャンスがすごくあると思います。

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中道:AgVenture Labはそういう活動の支援もしているんですか?

荻野:僕らはスタートアップがベースなので、そこまでやっていませんが、例えば、理化学研究所からスピンアウトしたアクプランタという会社は、酢酸を使って乾燥や高温に強い作物をつくる技術を持っています。地球温暖化の影響で干ばつが増えていることもあって、農業者の注目を集めています。

中道:次回は日本の農業の今後について深掘りしたいと思います。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

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