国内

2023.04.06 08:50

8つのJA組織が団結 スタートアップ支援で日本の農業を守る

鈴木 奈央
荻野:ITに関わることをやっていたんですけど、フィンテックが盛り上がり、「イノベーションだ」という話になり、「そう言えば荻野はアメリカで勉強してきたと言っていたな」ということで、イノベーション担当の役員に任じられました。ところが農林中央金庫の銀行業務だけではすでにレッドオーシャンで。

僕らの良さを出すためにはJAグループ全体で食とか農とか地域の暮らしといったものを絡めたイノベーションに取り組む必要がありました。そこで全国に8団体あるJAグループの組織を口説いて回って、農業と食と暮らしと、その周辺にある社会課題の解決を目指すスタートアップの支援をミッションにAgVenture Labを作ったんです。8団体がまとまって何かやることなんてなかったので、奇跡だと言われました。

中道:それぞれ独立している組織をまとめるのは大変だったんじゃないですか。

荻野:最初は斜に構える人もいましたけど、「日本の食や農のために、俺たちはこういうことをやらなければいけないんじゃないのか」と言うと、みんな否定しなんです。JAグループの一員としてそういうシンパシーを持っているんですね。

中道:社会課題の解決というのは?

荻野:1つは日本の農業を盛り上げることで、もう1つはJAグループ全体のカルチャーやマインドを変えていくことです。

中道:2019年にスタートしてからどうですか? コロナもあって大変だったと思いますが。

荻野:スタートアップ支援や農業の未来を変えていくのは地道にやり続けるしかありませんが、農業系や食関係のスタートアップは増えていますし、伸びてきているところもあるので、それはそれで1つの成果かなと思っています。

JAグループのカルチャーを変えるのは、職員が何十万人もいるので大変ですが、新しいコンテンツを提供するなど、僕らにできるところを地道にやっていこうと思っています。コロナになってからはリアルイベントはできなくなりましたが、オンラインを活用するようになり、距離が離れている人にも参加してもらえたのが良かったです。

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中道:リモートワークの広がりとともに地方に住む人が増えて、自然とか農業とかに触れる機会も増えましたよね。それが社会の後押しみたいになっているんじゃないかと想像しますが。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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