欧州の自動車大手VWは3月15日、2万5000ユーロ(約352万円)の「ID. 2all」と呼ばれるコンパクトハッチバックと、その他の9つの新たなEVを2026年までに発売すると発表した。一方、GMはすでに米国で3万ドル以下のEVのトップセラーである「ボルトEV」を擁しており、今年は「シボレー・エクイノックス」のEV版のベースモデルを3万ドルで発売予定だ。
さらに、電動SUV「オーシャン」の納入を控えるフィスカーも、2024年に2万9900ドルの小型クロスオーバーEV「Pear」を追加する予定だ。
これに対し、テスラで最も安価なエントリーモデルの「モデル3セダン」は、最近の数千ドルの値下げを経た後も税抜きで4万3000ドルもする。テスラにとって、比較的安価な車種がないことはさほど問題にはならないが、今後の数年間EV市場全体を拡大するためには安価なモデルが不可欠だと、調査会社AutoPacificの社長のエド・キムは述べている。
「現在、EVの市場シェアは6%程度に達し、ますます多くの消費者が次の購入車種としてEVを考え始めている。しかし、EVの販売価格の中央値は5万ドルを大きく上回る。これは、多くの消費者が手を出せる価格とは言えない」と、キムはフォーブスに語った。
テスラは、他のどのグローバルブランドよりもEVの普及に貢献し、2022年には世界で130万台以上を納入したが、販売価格の平均は6万5000ドルを上回る。バイデン政権は、2030年までに新車販売台数の50%をEVが占めることを望んでおり、カリフォルニア州などは2035年からガソリン車の新車販売を段階的に廃止することを目標としている。どちらの目標も、バッテリー駆動の自動車やトラックが今後数年で大幅に安くならない限り、達成は不可能だ。
VWはID.2allがいつ、どのようなかたちで発売されるかを明言していないが、この車両は1回の充電で約270マイル(約434キロ)の航続距離を持ち、米国でも発売されるという。「2all は、当社のブランドの到達点を示すクルマだ」と、VWの乗用車事業のCEOのトーマス・シェーファーは、記者発表で述べた。
テスラは安泰なのか?
EVに必要なリチウムイオン電池パックには、ニッケルやコバルト、リチウムなどの高価な材料が使用されているため、EVをより安価にすることは困難だ。テスラは3月1日の投資家向けカンファレンスで、より効率的な製造技術の採用や、新素材の活用によって製造コストを最大50%削減する計画を発表し、マスクは、その会場で次世代のモデルを示唆したが、その価格や生産開始時期については明らかにしなかった。マスクは、テスラの創業初年度の2006年8月に発表した最初のマスタープランで約束した安価なEVをまだ実現できていないが、そのことはブランド全体に打撃を与えてはいない。GMやVW、フィスカーらに低価格帯で先を越されても、テスラは大丈夫だとAutoPacificのキムはいう。
「テスラは非常に強固なブランドを築いており、低価格帯への参入が遅れても大きな問題にはならない。彼らが2万5000ドルのEVを発売すれば、消費者は飛びつくはずだ」とキムは語った。
(forbes.com 原文)