Forbes CAREER

2023.03.31

分岐点に立つ日本の農業を改革!「Forbes 30 Under 30」に選出された起業家がグローバル展開でチャンスを狙う

  • twitter
  • facebook
  • LINE

日本農業の採用情報をみる


農業と聞いて、どのような言葉が思い浮かぶだろうか。「キツい」「稼げない」「伸びしろの少ない産業」といったネガティブなイメージを持つ人も少なくないだろう。

ここに、農業の構造改革を起こし、「収益率の高い産業」にすることを目標に掲げている会社がある。「Forbes 30 Under 30 Asia 2022」に選出された内藤祥平が率いる日本農業だ。

平均年齢32歳で、金融機関や商社などの第一線で活躍した者たちが集結している同社。彼らは決して「脱サラ」ではない。「日本の農業で、世界を驚かす」をミッションに掲げ、事業をグローバル展開しているビジネスパーソンだ。

なぜ、農業なのか。どのように異業種出身の人たちがスキルを生かしているのか。ビジネスとして大きな転換期を迎えている農業と絡めながら、内藤に語ってもらおう。

農業はいま、成長か否かの分岐点にいる

日本は都会でも、1〜2時間も車を走らせれば田園風景を見ることができる。

のどかで気持ちのいい風景に癒やしを感じる人も多いが、そこに大きな課題が隠れている。

令和3年の農業総産出額は約8.8兆円。わずか4年前である平成29年は9.2兆円だったことを考えると、産業として縮小していることに気づく。加えて高齢化と後継者不足により、2010年からの10年間で農業人口は約50万人減少したと指摘されている。

日本の農産物はそのほとんどを国内で消費しているのが現状だ。マーケットが拡大していれば従来のやり方を維持すればいいが、実際はその逆。ならば課題解決のために、どうすれば良いか。

答えは一つ。経済が停滞している日本を尻目にどんどん豊かになっている国々でマーケットを獲得することだ。

内藤は「この状況はピンチでありチャンス。農業の生産性や効率を上げれば、大きなうねりを生み出せるかもしれない」と語る。

「日本は農業人口が減っているため農作地が余っており、作ろうと思えばいくらでも作れます。つまり日本の農産物を海外に売り出すなら、いまがチャンスなのです」
日本農業の求人・採用情報を掲載しています
海外の新たな市場で利益を獲得できれば“儲かる農業”を実現でき、産業を活性化できるかもしれない。内藤はそう考えたのだ。

一気通貫の流通で世界に日本のおいしい農産物を届ける

日本の農産物は美味で高品質だといわれている。熱心な品種改良と作り方の工夫を重ねているからだ。だが一歩海外に出ると、価格が高いため存在感は薄かった。

高価格の要因は流通だ。例えば青森で作られたりんごの場合、東京のスーパーに並ぶまでに2回以上の競りと複数の仲介業者が入る。生産から販売までの効率が悪いため、国内でさえ価格が高騰せざるを得ないのだ。

そこで内藤が取り組んだのが、サプライチェーンの垂直統合。日本の農産物を海外に輸出するための流通を一気通貫で構築した。農家から直接仕入れて自社で箱詰めし、そのまま海外に輸出している。

また、りんごを大きいロットで出荷するため、これまで農家が1haあたり20tしか収穫できていなかったところ、海外のニーズに合わせた新たな農作方法を提案し、60tの収穫を実現。また、傷のチェックから箱詰めを行う工程では、海外の最新の機械を導入することで人員・コスト削減を行う予定である。そして各国に営業担当を派遣し、現地小売店と密に連携を取りながら販売している。

こうした工夫の積み重ねで価格を下げ、海外の人が日本と大差ない価格で、とびきりおいしいりんごを食べられるようになったのだ。

仕組みを構築し、品種の知的財産保護

日本は品種開発の技術が優れている。しかし海外での品種登録がなされていなかったために、せっかく開発した品種が海外に流出していることもあり、日本の農産業を根底から揺がす問題となっている。

そこで内藤は、海外の自社農地で日本で開発された品種を作り、品種登録した人(育成者権者)がロイヤリティをもらえる仕組みを構築した。たとえばタイでは、日本で開発された品種のイチゴがタイの気候に合わせた形で栽培されており、日本農業は育成者権者にロイヤリティを支払っているのだ。

イチゴは足が早い。日本で食べごろを収穫して出荷すると、タイに着く頃には傷みが出る。しかし早摘みすると品質が落ちる。結果、品質が低いのに、価格が高いイチゴがタイの市場に並んでいた。それでは本来のおいしさが評価されず、輸出量は伸びようがない。

「だったら現地生産すればいいと考えたのです。そうすれば完熟したおいしいイチゴを販売できますし、輸送コストも抑えられます。同時にタイの農家の所得向上にも貢献できる。タイでは農作物が買い叩かれていて農家の所得が低く、技術向上の余地がありません。そこに日本の技術や品種といった差別化できる要素を提供することで、彼らの暮らしを良くすることができます」
日本農業の求人・採用情報を掲載しています

農業はさまざまな人材が必要な難しいビジネス

品質が良く、世界に誇れる技術を持っている日本の農業。世界に打って出るポテンシャルを持っているのに、なぜそのようなイメージがないのか。

背景には、日本の農業の多くが家族経営で、生産オペレーションしか担っておらず、販売やマーケティングまでに手が回っていなかったことがある。

内藤は「海外展開を前提に考えた農業においては、生産オペレーションと同じくらい、どこになにを投資するのかを決めるファンドのような動き方も重要になる」と語る。

高品質な作物を育てるのは大前提。ビジネスとして成長させるためには、作業や人員の組織化やマーケティング戦略なども必要だ。そのため日本農業では、金融機関や総合商社出身のメンバーも活躍している。

例えば投資銀行出身のメンバーは現在、選果場(りんごを選別・梱包する施設)をはじめとする、青森りんごビジネスを統括している。在庫や相場などの管理が重要な場で、係数面への強さや事業理解力を生かし、会社としての成長の一翼を担っているそうだ。

また前職でホテルの支配人を務めていたメンバーは、事業継承した選果場のPMIチームに入った。人員の組織化や業務改善において彼のキャリアが生き、円滑な統合プロセスを踏めたという。

「農業はすごく難しいビジネスなんですよ。どの業界でも在庫を抱えるデメリットは大きいですが、農業においては作物がどういうサイズや品質になるのかが天候によって左右されるなど、外的要因が多く、在庫リスクが非常に大きい。それでいて、作物の相場は常に変わる。品質の維持にまつわるマネジメントだけでなく、さまざまな関係者との交渉力やリーダーの資質が求められる仕事でもあります」

それでは日本農業においてはどのような人が向いていると内藤は考えているのだろうか。

「一言で表すなら、“いい人”。農業は、社内外の人間と長い時間をかけて関係を築いていく仕事です。多少不器用でもいいので、じっくりと相手と向き合える人が向いているのではないでしょうか。プラス、きちんと結果を残してきた人が理想です」

耕作放棄地だったところに、木が植えられた。自慢したくなるほどおいしい作物が海外に届き、ファンが増える。それにより作物を作った人たちはハッピーになり、一緒に酒を飲んで笑い合えた。

その積み重ねが日本農業の“いま”だ。内藤はそんなリアルビジネスならではの手触り感のあるやりがいを、日々噛み締めている。

日本農業の採用情報をみる

Promoted by 日本農業

ForbesBrandVoice