HUDは、フロントガラスに速度メーター等を表示したり、現実の光景に進路やアラートを重ねて表示したりするテクノロジーで、現状では主に電動自動車(EV)の高級モデルに搭載されている。この技術を専門とする英企業が、大手サプライヤーと自動車メーカー傘下の投資会社3社から60億円以上の出資を獲得した。
英Envisicsは3月9日、シリーズCラウンドの一環として、5000万ドル(約65億円)を超える資金を調達したことを明らかにした。このラウンドは、現代(ヒョンデ)モービスが主導し、ゼネラルモーターズ(GM)ベンチャーズ、Tarsadia Investments、ジャガー・ランドローバー傘下の投資会社のInMotion Ventures、自動車メーカーのステランティスが参加した。
Envisicsは、ホログラム技術を用いた拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR HUD)を手掛けている。同社の創業者でCEOのジェイミソン・クリスマス(Jamieson Christmas)博士は、「今回のラウンドに参加した投資家の顔ぶれは、世界の自動車メーカーが車両インターフェースとインテリア・アーキテクチャの変革を重要視していることを示している」と述べている。
GMでUltifi(アルティファイ)デザインを担当するシニアマネージャーのサンディー・リプスコムは声明の中で次のように述べた。「EV車両の2024年型キャデラックリリックにAR HUD技術を搭載することが決定し、Envisicsとのコラボレーションは今年中に生産体制に入る。このイノベーションは、ドライバーの視界により没入感のある情報を統合し、エクスペリエンスをさらに高めるものだ」
ジャガー・ランドローバーは、2010年に他社に先駆けてEnvisicsのホログラフィックHUDを採用した。ストレイト・リサーチが3月7日に発表したレポートによると、HUDの需要は急拡大しており、今後も成長が続く見込みだという。
「世界の車載用HUD市場規模は、2022年に15億7000万ドル(約2000億円)に達した。2023年から2031年は年平均23.60%で成長し、2031年には105億7000万ドル(約1兆4000億円)に達すると予測されている」と同レポートは述べている。
ドライバー体験の向上を目指すHUD業界の好調は今後も続きそうだ。
(forbes.com 原文)