21日から2日間の日程で開かれたFOMCの声明によると、政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利は4.75〜5.0%に引き上げられ、16年ぶりの高さになった。米シリコンバレー銀行などの経営破綻をきっかけとした金融不安がなおくすぶるなか、銀行間で短期資金を貸し借りする際のコストはさらに高くなった。
一方で、声明では今後の利上げについて明示的に言及しなかった。代わりに「インフレ率を(目標の)2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、いくらか追加の金融引き締めが適切かもしれない」とした。
前回会合までしばらくの間声明に含まれていた「継続的な利上げが適切と予想」という文言は消えた。もっとも同時に示された最新の金利見通しによると、2023年末時点のFF金利は5.1%と前回から変わっていない。そのため、年内にあと1回利上げが行われるのが引き続き最も可能性の高いシナリオとなる。
FRBのジェローム・パウエル議長は声明発表後に開いた記者会見で、米経済がディスインフレ(インフレ鈍化)になっているのは「間違いない」と強調するとともに、銀行部門の健全性にも自信を示した。会見内容は全体的にハト派色の濃いものになった。
ハリス・フィナンシャルのマネジングパートナー、ジェイミー・コックスは「利上げサイクルの終わりが視界に入ってきた」とコメントした。
FRBによる利上げは昨年3月から9会合連続。2月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.0%の上昇と8カ月連続で伸びが鈍化したものの、依然としてFRBの目標よりかなり高い。一方で、利上げによる企業収益の圧迫や株価の下押し、銀行の相次ぐ破綻といった副作用も目立ち始めていた。
CMEグループによると、金利先物市場では今回のFOMCについて0.25ポイント利上げの確率が約90%、据え置きの確率が約10%と見込まれていた。
金融危機の時期を含む2006〜11年に米連邦預金保険公社(FDIC)の総裁を務めたシーラ・ベアーは米紙ワシントン・ポストのインタビューで「米国が過去に見舞われた深刻な景気後退はすべて、金融システムの不安定化と大幅な信用収縮によって引き起こされた」と警告し、FRBは利上げを停止してインフレよりも銀行危機への対応を優先させるべきだとの考えを示している。
22日の米株式相場はFOMCの声明発表とパウエルの記者会見を受けて一時やや上昇したものの、その後下落に転じた。ダウ工業株30種平均は250ポイント(0.7%)急伸したあと610ポイント近く下落し、450ポイント安で取引を終えた。
(forbes.com 原文)