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2023.03.31

iPS細胞技術の社会実装に向けた大きなステップ。タケダがバイオスタートアップを生み出した理由とは

武田薬品工業と京都大学iPS細胞研究所の共同研究プログラムT-CiRA(ティーサイラ)から生まれたオリヅルセラピューティクス。iPS細胞技術の社会実装を目指す同社の設立背景から、製薬業界を取り巻く課題を考える。


京都大学iPS細胞研究所(以下、CiRA)の山中 伸弥 名誉所長・教授が人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製技術を確立し、ノーベル生理学・医学賞を受賞したのは2012年のこと。あれから10余年、安定した形質を持ったまま細胞を自己複製させる臨床用iPS細胞株の作製は達成され、さまざまな疾患においてiPS細胞技術を用いた細胞治療の臨床試験が行われており、iPS細胞技術を用いた病態の解明や新しい薬の開発も進められている。

そうしたなかで、誰もが期待するiPS細胞技術の社会実装に向けて、21年6月に大きな一歩を踏み出したスタートアップがオリヅルセラピューティクス(以下、オリヅル)だ。

人材とナレッジの継承で創業初期の壁を乗り越える

iPS細胞由来の再生医療等製品の開発事業と、iPS細胞技術の利活用事業に特化した研究開発型企業として注目を集める同社設立の背景には、製薬大手・武田薬品工業(以下、タケダ)の支援があった。

「会社として事業を始める以上、本業の研究開発以外にも多くの業務が生じます。例えば、オリヅルは26年の株式上場を目指していますが、株式上場に必要なコーポレートガバナンスの作成などは、私たちにはまったく未経験の業務でした。こうした仕事は、手取り足取り教えてもらう必要がありますが、実はこの『教えてもらう』こと自体、起業する立場からすると容易ではありません。そこをタケダにサポートしてもらいました。

そして何より、オリヅルの前身であるT-CiRAの成果、つまり心筋細胞、膵島細胞に関する知的財産権の譲渡を受け、研究員もそのまま継承できたこと、タケダもオフィスを構える『湘南ヘルスイノベーションパーク』で創業できたことは、事業を前進させていくために非常に大きな後押しになったと感じています」

そう語るのは、オリヅル 代表取締役社長、野中 健史だ。日本のバイオ領域におけるスタートアップの成功例は、決して多いとは言えないのが現状だろう。その背景には、バイオ関連技術を社会実装するまでには幾度にもわたる実験などに長い年月がかかるうえ、膨大な研究開発費が必要となり、事業者側も支援者側も続けていくこと自体が容易ではない事情があるからだ。事実、世界中から期待が寄せられるiPS細胞技術の研究ですら、研究開始から10年以上の時を経てようやく実用化への道筋が見えてきたところだ。
武田薬品工業T-CiRA ディスカバリーアンドイノベーションヘッド 梶井 靖

武田薬品工業R&Dジャパンリージョンヘッド 梶井 靖

アイデアを社会実装につなぐ道筋を示していきたい

「研究の源泉がアカデミアにあり、いわゆるセレンディピティ(偶然の発見)によって、想定外のイノベーションが新たに誕生する可能性があるという点で、オリヅルの前身とも言えるT-CiRAは一般的なタケダの研究開発プロジェクトと大きく異なりました。一部の例外を除けば、ほとんどのプロジェクトにおいて、T-CiRAの研究員は、将来の実用化の可能性もよく見えないまま一生懸命に研究に打ち込んでいたというのが、開始当初の実態です。ようやくそのめどが見えてきたのは、プログラムを開始して5、6年が過ぎた頃でした」

タケダR&Dジャパンリージョンヘッドの梶井 靖のこの言葉からも、ひとつのバイオ技術の社会実装にはいかに根気が必要となるかがうかがえる。しかし、それでもタケダがその可能性にかけ、T-CiRAからのスピンアウト企業としてオリヅルを世に送り出してサポートを続けるのは、日本初の技術を世界に発信していきたいという強い思いがあるからだ。

「新しいアイデアをきちんと社会実装に結びつけることができる、そのステップをつくることが重要だと考えています。例えば医薬品開発の場合、重要なステップは製剤化です。この部分が欠落していると、結局はアイデア倒れに終わってしまう。アメリカが世界に先駆けて新型コロナウイルスのワクチン開発に成功することができたのも、アイデアを実用化につなぐ部分がしっかりと構築されていたからです。日本にも素晴らしい基礎研究や革新性を秘めた技術基盤がありますから、それらを着実に社会実装にまで結び付けていく道筋を示していきたいと考えています」(梶井)

iPS細胞技術により製薬業界を活性化させたい

「日本で生まれたiPS細胞技術を、日本発のコア技術として育成して、世界に発信したいという山中教授の考えには大いに共感する」という野中もまた、オリヅルを通して日本の技術力を世界に伝え、日本を再び元気にしたいという思いがあるという。そのために、日本のバイオスタートアップの置かれた課題について、こう続ける。
オリヅルセラピューティクス代表取締役社長兼最高経営責任者 野中健史

オリヅルセラピューティクス代表取締役社長兼最高経営責任者 野中 健史


「研究開発や製造拠点の誘致に関して、日本のスタートアップに対する投資額は、海外と比べて1桁小さいのが現状です。本来、研究開発に必要な資金の規模はどの国でも同じはずですが、なぜか日本市場で調達できる資金の規模は小さいのです。日本の投資市場は、医薬品開発のような巨額でリスクの高い投資の経験が少なく、投資家のマインドセットにも差があると感じます」(野中)

研究成果からコーポレートガバナンスなどのバックオフィスにおける知見の共有まで、タケダがオリヅルを支えてきたように、資金面においてはその道のプロである投資家やベンチャーキャピタルによる支援が、日本のバイオスタートアップを大きく飛躍させるきっかけとなるかもしれない。

「iPS細胞技術の素晴らしい点は、従来とはまったく異なる角度からバイオロジーを再検討できる点にあります。特に山中教授らの発見は、従来のバイオロジーの概念をくつがえす力を秘めているのです。その知見を創薬に活用することで、例えば現在進行中の培養細胞を治療に用いるだけでなく、従来とはまったく異なる視点によるイノベーションも実現可能になります。そのようなイノベーションが革新的であるほどリスクを伴いますので、挑戦者を支える厚みのある仕組みが日本においても発展していくことを期待しています」(梶井)

これからのオリヅルはiPS細胞技術の臨床研究や事業化など、研究者にとってさらに未知の領域に挑んでいくことになる。彼らのようなスタートアップの挑戦があってこそ、日本の研究・技術力の底上げにもつながっていくはずだ。


武田薬品工業 T-CiRA
https://www.takeda.com/jp/what-we-do/t-cira


梶井 靖◎武田薬品工業R&Dジャパンリージョンヘッド。東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。国内外のメガファーマでメディカルアフェアーズ部門等の職を歴任。2019年4月に武田薬品工業に入社。

野中 健史◎オリヅルセラピューティクス代表取締役社長兼最高経営責任者。20年近くに渡り製薬企業で研究開発に従事。製薬以前は心臓血管外科医として12年臨床現場で勤務。2021年4月から現職。

Promoted by 武田薬品工業 / text by Natsuko Kuniyasu / edit by Kaori Saeki

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