IT大手から流出のテック人材、自動車メーカーが奪い合い

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クルマが「走るコンピュータへ」と進化する中、自動車業界にとって、テック企業を解雇された数万人ものソフトウエアエンジニアやプログラマーは、魅力的な採用候補者となっている。アマゾンやグーグル、メタなどの大手IT企業を解雇されたエンジニアたちにとっても、自動車メーカーや関連サプライヤーで新しいキャリアを築くのは絶好の機会だ。

米労働統計局は、全産業におけるソフトウエア開発者や品質保証アナリスト、テスターの求人数が2021年から2031年にかけて25%増加し、41万1400人に達すると予測している。GMとフォードの公式サイトで採用情報を確認すると、それぞれ283人と364人のソフトウエアエンジニアを募集している。

シリコンバレーに本拠を置く車載ソフト大手ソナタス(Sonatus)のジェフ・チョウCEOは、優秀なエンジニアの採用に躍起になっている。同社のソフトウエアプラットフォームは、ヒョンデ、ジェネシス、キアの車両に搭載されている。

「自動車業界は、従来のメカやハードウエアを中心したビジネスからソフトウエア開発重視に変化しており、メーカーは多くのソフトウエアエンジニアを採用している。しかし、これらの企業にとっては、ソフトウエアエンジニアが働きやすい企業文化を構築することが大きな課題となっている」とチョウは指摘する。

「ハードウエアは、生産前にほぼ全てのことが計画されていなければならないのに対し、ソフトウエアは、アップデートや変更、新機能の追加を、設計の過程はもちろん、開発後でも行うことができる。これは大きな文化的衝突だ」

チョウは、サプライヤーとして顧客と協業する上で、相手企業の文化を尊重すると同時に自社の健全性を維持することを心掛けており、これを「相互信頼に基づく結婚」と呼んでいる。しかし、ソナタスは時に顧客である自動車メーカーと優秀な人材の争奪戦を繰り広げることもあり、微妙なバランスを取る必要がある。

「私が求めているのは、適正なスキルを持っているだけでなく、スタートアップ環境で働き、会社を自分の手で作り上げたいというメンタリティを持った人材だ。報酬面以外にも、これらの要素を重視する人材が欲しい」
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編集=上田裕資

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