競技が行われていない時間帯を活用し、子どもたちに本物のフィールドを走ってもらった。もちろん計測に使用するのは、世界陸上の選手たちが使用するセイコー製の本物の機材。講師は、日本から駆けつけた福島千里さんが実技指導を、大会で計時計測を担当するセイコータイミングチームのスタッフが機材の説明を担当。本物の世界陸上の会場で、本物の機材を使い、元オリンピアンから指導された子どもたちのテンションはかなり高く、みんな笑顔だったという。
「本物には本物にしかない特別感、雰囲気というのがあります。それを子どもたちに味わってもらうのはとても大事なことだと思っています。僕自身、小さい頃の思い出がすごく大切になっていて、それが今の自分を形づくっていますし、そうした経験の中で自分のやりたいことが見つかっていくと思います。ですから子どもたちが成長した後の社会にとっても、我々大人が子どもたちに、そういった場面をどれだけ多く提供できるかが大事なのではないでしょうか」(甘原さん)
セイコーでは今後、「わくわく教室」の実施エリアを拡大していく予定だそうだ。
コロナ禍で学校の行事や遠足、修学旅行などのイベントが軒並み中止になる中、セイコーはリモートの新しいプログラムを開発するなどして、感染対策を取りながら子どもたちに本物を体験してもらうイベントを続けてきた。
安井さんは「持続可能ということは、時間をかけて地道に育てていく活動を続けていくことがとても大事なので、どんな時も活動を止めずにやっていきたい」と語ってくれた。その言葉にサステナブルの本来の意味、そして140年以上もの間、時を刻み続け、老舗時計メーカーとして技術を高め続けてきた企業の矜持を見た気がした。