米アマゾンのサイトに大々的に設けられた特集ページ(https://www.amazon.com/sugimoto/)では、アイスクリームに椎茸粉をかけて試食した外国人が「椎茸マッシュルームの味はしない、ただ、すごく奥深いうま味が感じられる」と絶賛。
椎茸粉を販売するのは、宮崎県高千穂町の椎茸問屋「杉本商店」。原料は、高千穂郷のクヌギの原木で自然栽培された、厚みと、豊かなうまみが特徴の「原木栽培椎茸」だ。
上の動画の中で、「Shiitake Powder(椎茸パウダー)」を使った外国人ユーザーは以下のように話す。
「どんな食材にも、加熱10分前に椎茸パウダーをかけると味が深まる(しかも、椎茸の味はしない)。もっとも強力な自然のUmami(うま味)ブースター(増強手段)だ」
減塩対策にもなるため健康増進にもプラス、さらに「コーシャフード(ユダヤ教徒が食べてもよい「清浄な食品」)である」というところも大ヒットの理由であるようだ。
また、「白あえサラダ」「おかゆ」など、椎茸を使った、英語による190ものレシピ動画を閲覧することができるという作り込みぶりだ。
Forbes JAPANは、ドバイ出張から宮崎の本社へと戻る、杉本商店の杉本和英社長と羽田空港第1ターミナルで会い、話を聞くことができた。「干し椎茸」を海外でバズらせ、ドバイの富裕層にもリーチさせようとする無二のストーリー、メカニズムとは。
「買い続ける」というビジネスモデル
──僕たちのビジネスモデルは、本当にもう、「買い続けること」なんです。僕らがそもそもなぜ、外国に行かなければならなかったか、その理由もこのビジネスモデルにあります。すなわち、「地元宮崎県の高千穂郷周辺の生産者さん約600軒が、作った椎茸をいつでもうちに持って来られる、そして、持ってきた椎茸は『全部その場で、現金で買い取る』」という、弊社の経営を支えてきた信条とシステムが発端なのです。
椎茸のシェアは、2016年までは国内が100%。国内で十分完結していました。しかし、国内の需要が冷え込んでくると、前述のビジネスモデルが成立しなくなってくるんです。とはいえ、「国内市場が小さくなってきたから、あなたたちから買う量も今年はこれくらい減らします」というのは信条に反します。
ビジネスは、「仕入れて売る」のうち、どうしても「売る」方に比重を置きがちだと思います。でも、誰よりも安い原料を仕入れて、誰よりも安い労働賃金で、誰よりも速く機械を動かして、誰よりも安く大量に作った人が勝ちだった時代は終わったと思います。今は「生産者さん第一」ですし、そうあるべき時代になっています。だからこそ、「生産者さんから買い続ける」ためにひたすら市場を広げる必要があった。
日本の人口がどんどん減って、需要も激減していく中、世界の人口は100億を超えるかもしれない。食糧はかならず足りなくなります。そして、たとえばアメリカならば市場がそもそも大きいはずだし、 生産者さんたちが作ってくれたものを僕たちが高く買い続ける上で向かうべき先ではないかと思いました。
それに、とくに海外の富裕層や、とりわけ感度の高い人たちは「そこ」にしかないものだったり、「そこ」じゃないと買えないものに価値を見出したいと思っているし、その、価値の高いものを買いたいと考えている。そういう時代になってきていることを感じていたことも、海外に販路を求めた理由です。
世界中の富裕層が「日本の椎茸はすごい」とこぞって争うように手を出せば、そのほかの人たちも欲しくなって、値段が上がっていくだろう、と思いました。