「無料版はあくまで広告だと割り切っていました。そこで僕を見つけてくれる人が増えてくれたおかげで、有料版の購入数や企業などのクライアントから依頼を受けることも増えてきました」
YouTuberが趣味から仕事になっていく2010年代後半の動きを彼は味方につけた。Audiostockの顧客アカウント数も2017年に1万7469件だったが、数年で10万以上に急増している。意味するのは、音源を無料で探すだけでなく、お金を払って使うものと考えるユーザーの増加だ。音源をアーカイブすることで生まれる収益はかくして安定化に向かう。
「生活ができるようになったのはよかった。でも、PCやソフトの性能、技術がアップデートされて、BGMってどんどん古く聴こえるようになる。昔のゲーム音楽を聴いて、古いなって感覚を多くの人がもつのと同じです。僕も新しいものをつくらないと時代から取り残される。作曲AIやソフトの進化は今後も止まらない」
だから不安もあるのか、と尋ねると彼は首を横に振った。
「技術の進化で自分が何をつくれるかが楽しみなんですよ。VRやメタバースからも音楽へのニーズは増えると予測します。3D空間で聴こえる音楽って2Dとはまったく違うものなんですよ。そこでどんな音が合うのか。探求したいですよね」
あくまでつくりたいのはよい音楽であり、収益はあとからついてくるもの。きれいごとは、MoppySoundのなかでは正当なビジネスモデルになっていた。
もっぴーさうんど◎企業のPRや映画、ゲーム、など多様な用途の動画のBGMを制作、販売する。ロイヤルティフリーのBGM・効果音のストックサービス「Audiostock」で600曲のBGMを公開している。1曲およそ3000円でこれまでに約9000件ダウンロードされている。1990年、岩手県生まれ、埼玉県育ち。2015年から作曲者向け素材の音源の開発もしている。