そして1980年2月にホイフォンを設立し、酉年生まれのトランは、会社のロゴを雄鶏のイラストにした。最初は中古のシボレーのバンで販売を開始したシラチャの売上は好調で、1987年になると会社をロサンゼルス市の東のローズミードにある約2300平方メートルのビルに移転させた。
ニセモノの台頭
そして2010年に、ローズミードからほど近いアーウィンデール市にある約6000平方メートルの拠点に再び移転した。しかし、急成長した会社は、新たな課題に直面した。2013年に、地元の当局はホイフォンの工場から発生する唐辛子の臭いが「公共の迷惑」であるとして訴えたのだ。これに対し、普段はメディアに出たがらないトランは、工場を一般公開し、2013年にはシラチャのドキュメンタリー映画が制作された。彼の戦略は功を奏し、2014年5月までに、市は訴えを取り下げた。
シラチャが直面したもう1つの課題は、同社のシンボルである雄鶏のロゴを真似した瓶に入った偽物を販売する業者の台頭だ。「私たちは何度も停止命令書を送り、訴訟を起こした」と、ホイフォンの代理人を務めるロサンゼルスの弁護士のロッド・バーマンは話す。
「しかし、デイビッド(トラン)とホイフォンは、結局のところ自分たちが、他人には真似ができない独自のプロダクトを持っていることに気づいた。シラチャの代わりになる製品は、この世に存在しない。それこそが、偽物と戦う上での最高の防御なのだ」
年間約5万トンの唐辛子を使用するホイフォンは、天候不順で唐辛子が不作となった昨年は一時的に生産停止を余儀なくされたが、現在は通常の生産ペースに戻り、1時間に1万8000本のシラチャを製造している。
トランは、40年以上にわたって、唐辛子、砂糖、塩、ニンニク、酢という常に同じ材料のみを使用してこのソースを作りづづけてきた。そのレシピこそが、ベトナム移民の小さなスタートアップを評価額10億ドルの大企業に成長させた。
「安い材料を使ったり、商品を宣伝したりして、もっと儲けることもできたはずだ」とトランはいう。「でも、私の目標は、金持ちのホットソースを貧乏人の値段で作ることなのだ」
(forbes.com 原文)