その一つの象徴が、映画「トップガン マーヴェリック」だという。
「マーヴェリックは極端に描かれてはいますが、米軍パイロットのひとつのモデルです。ロシア軍と米軍のパイロットのこうした特性を見れば何が起こるかわからない戦場でどちらが結果を出せるか、出せないかは、火を見るより明らかでしょう」
そして、杉山氏は「こうしたソ連・ロシア軍の弊害は、他の旧東欧圏の軍隊にも影響を与えています」と指摘する。そのうえで、米国空軍情報誌『Air Force Magazine』に掲載されていたルーマニア空軍の例を指摘する。ルーマニアは2004年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、F16戦闘機への移行に取り組んで来たという。ルーマニア空軍の若いパイロットはソ連製のミグ戦闘機への搭乗経験もない。彼らは、米空軍で教育と訓練を受けた。
だが、杉山氏はルーマニア空軍のパイロットについて「一通り自分で一人前のことができる、いわゆる『ウイングマン(僚機)』レベルまで訓練を受けても、西側操縦者並みには育っていないそうです。ソ連式のやり方で長年、訓練教育を受けてきた組織の経験、文化、行動様式などは簡単に払拭することはできないということです」と語る。
杉山氏によれば、戦闘機を操縦できるようになることと、組織として有効な作戦を行うことは別の問題だという。「ウクライナ戦争ではF16の供与に注目が集まっていますが、仮に供与されたとしても戦況を大きく変えるような、いわゆる『ゲームチェンジャー』にはならいのではないでしょうか」。
ロイター通信によれば、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者プリゴジン氏は18日、自身のSNSで「5月中旬までに約3万人の戦闘員を新たに採用する」と明らかにした。
西田氏は「ワグネルもロシア正規軍も、新たに集めた人員に十分な訓練もさせず、軍服だけを着せて、すぐに戦場に出しています。敗色が濃くなっても背後から兵士を叱咤する以外の方法を知りません。40年前に起きた事件の教訓に全く学んでいないのです。このようなロシア軍と傭兵たちが人道法を守ることができるとは到底考えられません。プーチンは、継戦すればするほど、戦争法と人道法違反の罪を重ねていかざるを得ないのです」と指摘する。
マーヴェリックのような軍人が育つことを許さないロシア軍を待っているのは敗北への道しかないのかもしれない。
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