海外に商機を求めたい、優秀な人材を雇いたい──。そう考えるスタートアップや中小企業の経営者は少なくないだろう。国境をまたいで活躍してきた2人の起業家がたどり着いた解決策とは。
「海外に自社製品のニーズがあるので現地法人を立ち上げたい」「海外の有能な人材を雇いたい」。だが、リソースやノウハウが足りないー。
起業家や中小企業の経営者からこうした声をよく聞く。
リモートワークの普及で、世界的に人材を巡る競争が激化する中、注目を集めているスタートアップがある。2019年創業のスタートアップ「Deel(ディール)」である。同社は、「EOR(従業員の代替雇用)」を看板に、グローバル人材をリモート活用する企業の労務管理SaaSを提供している。
「優秀なのに世界的な企業で働けていない人たちを目の当たりにし、問題を解決したいと考えた」と語るのは、同社の共同創業者兼CEOのアレックス・ブアジズ(写真)だ。仏生まれの彼はイスラエルや米国で教育を受けている。
一緒に会社を立ち上げた共同創業者でCRO(最高収益責任者)のシュオ・ワンは中国で生まれ、米MITメディアラボでロボティックスを研究するなど、創業者たちは国境をまたいで活躍してきた。
海外で現法設立や雇用をする際、給与と経費の精算、国ごとの税制や社会保障制度への対応など、すべきことが多い。だがディールのプラットフォームを使えば、現法を設立することなく、従業員雇用や業務委託契約を数分で実現し、200種類の通貨での給与支払いもワンクリックで完了できる。EORのような人事サービスを使うことで、働く側も雇う側も、ビジネスのダイナミズムが変わってくるのだ。
「国籍に関係なく、人は働きたいところで働けるようになるでしょう。海外で働くのが当たり前になるのは時間の問題です」(ブアジズ)
アレックス・ブアジズ◎Deel共同創業者兼CEO。2019年にシュオ・ワンと同社を立ち上げる。史上最速で“ユニコーン”に成長して話題に。1万社以上の顧客を抱える(22年現在)。