武器は60年前の冷戦時代の遺物だ。所属大隊は前進を試みるたびに多数の兵士を失っている。指揮官は数キロ離れた場所で、ウクライナ人が退避して空き家となった家屋に陣取り、前線にはめったに顔を出さない。砲兵の支援も減っているようだ。
士気が下がるのも無理はない。しかも、敵対するウクライナ軍はレオパルト2、M1エイブラムス、チャレンジャー2などの戦車や、高機動ロケット砲システム(ハイマース)といった西側のハイテク装備を次々入手しているのだから。
特別手当として大金が懐に入る見込みがあれば、戦場に飛び込んでウクライナ軍の戦車に突撃する気になれるだろうか?
石油生産資材を扱うロシア企業フォレスは2023年初め、ロシア兵やロシア側で戦う戦闘員が米主力戦車のM1やドイツの主力戦車レオパルト2を無傷で鹵獲(ろかく)した場合、500万ルーブル(約850万円)の報奨金を支払うと発表した。この金額は、ロシア人の平均年収の4倍に相当する。
続いて、ウクライナ南部でロシア軍とともに戦っているパヴェル・スドプラトフ志願兵大隊が先月、フォレスの報奨金を倍掛けし、稼働可能な状態のレオパルト2、M1、チャレンジャー2を鹵獲すれば1両につき1200万ルーブル(約2040万円)を支払うと約束した。ほぼ10年分の賃金だ。
ロシア政府関係者は民間による報奨金を賞賛。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は「これらの戦車については、焼き尽くすと宣言した」「このようなインセンティブがあれば、熱心な兵士が増えるだろう」と述べた。
そして、今やロシア大統領府も自前の報奨金を支払うことにしたようだ。独立系調査組織「紛争情報チーム(CIT)」は17日の報告で、シベリア南部ノボシビルスクの市長が最近ソーシャルメディアに投稿した、ロシア国防省の報奨金とおぼしき内容を取り上げた。レオパルト2、M1、チャレンジャー2を破壊したら50万ルーブル(約86万円)、ハイマースかトーチカU短距離弾道ミサイルシステムを撃破すれば1人につき30万ルーブル(約51万円)、ヘリコプター1機なら20万ルーブル(約34万円)、旧式戦車は1両につき10万ルーブル(約17万円)だという。