サッカー、バスケ、バレーなど競技用ボールで知られるモルテンが開発した、企業や団体が組み立て式サッカーボールを贈るSDGs貢献プログラム「MY FOOTBALL KIT(マイフットボールキット)」では、さらにその先の子どもたちの成長につながる支援を目指すという。
モルテンでこのプロジェクトを推進するMY FOOTBALL KITグループのリーダー・内田潤氏に話を聞いた。
物を贈るだけに留まらない支援を
MY FOOTBALL KITとは、3種類の部品54個を組み立てて作ることのできるサッカーボールを、必要とされるところに企業や団体が贈ることにより、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」や目標12「つくる責任・つかう責任」に貢献するプログラムだ。このボールが画期的なのは、組み立てる前の部品はいたってコンパクトなので配送が楽。たとえ破損したとしても、壊れた部品を交換するだけで済む。しかも、作っているのは世界的な大会の公式な試合球に採用されている一流メーカーのモルテンだから、品質も折り紙付き。
しかし、それらのメリットはどちらかというとあとからついてきたものだと内田氏。
「モルテンには以前から、『途上国の子どもたちにボールを送りたいんだけど、安く購入できないか』などという相談をたくさんいただいていました。もちろんそれは良いお話で、もらった子どもたちは喜ぶし、あげたほうも子どもたちのためにできたという満足感が得られます。
ただ、ボールを贈るだけでは、子どもたちがその状況から抜け出す助けになっていないのではないか。子どもたちは成長することができていないんじゃないかということが私は気になっていました。
では、どうしたら彼らの成長に寄与できるかと考えたときに、教育の要素を入れたらいいのではないか。組み立て式にしたら面白いんじゃないかということに行き着きました」
nendoがデザイン 共通の思いで開発
モルテンが組み立て式のサッカーボールを作るに当たってデザインを担当したのが、デザイナーそして建築家でもある佐藤オオキ氏率いるデザインオフィスnendo。モルテンはボールを通して、nendoはデザインを通して社会課題を解決したいという共通した思いから組み立て式のボールを作り上げていった。
「nendoさんは、課題解決のために細部にこだわり、間違いなくかっこいいデザインを提案してくれます。一方私たちは、安全面や教育的要素を入れ込むためにこうしたいという思いがあります。
発展途上国の子どもたちは、素足やサンダルでボールを蹴ることが多いので、怪我をしないような構造であることが重要。私が実験台になり、蹴り心地もあって痛みも少ない、かつデザイン的にも優れた、両者のバランスの良いボールを作り上げていきました」