UBSは19日、クレディ・スイスの時価総額を大幅に下回る額での買収計画を発表。これには、動揺する金融市場を沈静化させる目的もあった。買収により、スイスには新たな巨大金融企業が誕生。かつて世界金融システムの中心的存在であり、長年にわたって「大きすぎてつぶせない」と考えられてきたクレディ・スイスが消滅することとなった。
同社は近年、マネーロンダリング(資金洗浄)や制裁違反、汚職、詐欺、脱税の他、経営破綻したアルケゴス・キャピタル・マネジメントやグリーンシル・キャピタルとの関係、自社員に対する監視活動の発覚など、一連の問題に揺れていた。そして先週、公表が遅れた年次報告書で、財務報告の「重大な弱点」を認め、株価が史上最安値に下落したことで、状況はさらに厳しくなった。
シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクの米2行の破綻を受けて不安が広がっている世界金融市場にとって、クレディ・スイスの失墜は最悪のタイミングとなる。同社の社債権者は、投資資金がかき消される可能性が高いため、買収に反発するとみられ、市場の不安を悪化させるとみられる。
クレディ・スイスが抱える問題は米2行の破綻以前から懸念されていたが、このような大手金融機関が失われることで、懸念が強まることは間違いない。
(forbes.com 原文)