だが英ロンドン・シティ空港は、2023年4月から液体物の手荷物としての機内への持ち込みを100ミリリットルに制限する規則を撤廃する。
現行の規則は2006年、過酸化水素由来の爆発物を清涼飲料水の容器に詰めて飛行機に持ち込もうとしたグループによるテロ未遂事件を受け、施行された。
この規則を廃止するのは、シティ空港が初めてではない。英北部ダラム近郊にあるティーズサイド空港が今月上旬、同国初の同規則撤廃を発表していた。この変更は、英政府が昨年12月、空港の手荷物検査に新技術を導入する方針を打ち出したことを受けたもの。
英国は来年8月までに国内のすべての空港で同規則を廃止する予定で、2018年からロンドンのヒースロー空港とガトウィック空港のほか、バーミンガム空港で試験を行ってきた。この手荷物検査の新技術は、米アトランタのハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港やシカゴのオヘア空港などですでに数年前から導入されている。
この新技術は病院で使用されているような高度なCTスキャナーと同様のもので、手荷物の中に危険な液体が入っていれば、機械がわずか数秒で識別し、3次元(3D)画像を表示する。英国の多くの空港に設置されている従来の機械では、2次元の画像しか表示することができない。
新技術が導入されれば、乗客は空港で手荷物の中身を取り出して検査を受ける必要がなくなる。手荷物として機内に持ち込める液体の容量は最大2リットルとなるほか、ノートPCやタブレットなどの電子機器も、手荷物に入れたままで検査機に通すことができるようになる。化粧品やクリームを透明なビニール袋に入れる必要がなくなるというのも、1つの時代の終わりを感じさせるだろう。
ロンドン東部の金融街に近いシティ空港の利用者数は、今年1月は21万7000人、2月は22万5000人と、前年同期比で82%も増加しており、今回の変更は空港側にとっても朗報となる。
同空港ではすでに高性能スキャナーを備えた2本の手荷物検査レーンが試験的に導入されており、今月後半にはさらに第3・第4レーンが追加される計画だ。これから始まる学校の春休みで旅行者の増加が見込まれる中、乗客は手荷物から液体を取り出すことなく航空便を利用できるようになる。
ロンドン・シティ空港のロバート・シンクレア最高経営責任者(CEO)は、新たな手荷物検査レーンによって手間と行列がなくなり、乗客に喜ばれるだろうと評価している。
他方で、2006年に液体物の機内持ち込みが規制されて以降、隆盛を極めていた旅行用のミニサイズ商品の製造業界におよぶ影響は未知数だ。旅行者が便利なミニサイズ化粧品を求める傾向は今後も続く一方で、英国の手荷物検査基準の緩和が売上に影響する可能性もある。世界の旅行用化粧品市場は年率4.5%程度で成長し、2030年には32億ドル(約4200億円)に達すると予測されている。
(forbes.com 原文)