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2023.03.31

京阪神で醸成される大学発スタートアップ・エコシステムに期待が高まる

スタートアップ投資が盛り上がりを見せるなか、京阪神エリアで最先端の研究に取り組む大学の研究・技術シーズ(研究者)の起業活動支援事業を行っているのが「京阪神スタートアップアカデミア・コアリション(KEIHANSHIN STARTUP ACADEMIACOALITION)」、通称「KSAC」だ。


KSAC が掲げる目的は「グローバルに活躍する大学発スタートアップを継続的に創出し、世界に伍するスタートアップ・エコシステムを構築すること」だ。現在までに、京阪神の大学・産業界・金融界・自治体といった60以上の機関が参画し、大学発スタートアップの創出に向けてエコシステムの構築を目指している。主な支援事業は大別すると4つ。「アントレプレナーシップ教育」「起業環境の整備」「エコシステムの形成」、そして、大学での基礎研究と事業化との間にあるギャップを埋めることを目的とした実証実験や事業化検証等に要する資金提供・ハンズオン支援を行う「GAPファンドプログラム」だ。

KSACは、文部科学省の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)<研究成果展開事業>大学発新産業創出プログラム(START)等を活用することで、グローバル拠点都市として内閣府から選定された京阪神エリアにおける、大学発スタートアップ創出のプラットフォームを担っている。

2022年10月、KSACはForbes JAPANとの連携企画「NEXT PIONEER 2022-挑戦する次代の研究者たち-KSAC MATCHING DAY Vol.01」を開催した。本イベントでは、GAPファンドプログラムを受けた研究者のなかから、投資・提携先などのパートナー候補を求める研究者3人が研究内容と事業化構想のピッチプレゼンテーションを、さらに11人の研究者が個別マッチング会およびネットワーキングを実施した。

そして、2023年2月28日には「KSAC MATCHING DAY」Vol.02が、京都経済センター3階のオープンイノベーションカフェ「KOIN」と、オンライン配信のハイブリッド開催で行われた。今回、ピッチプレゼンテーションを行った研究者は7名に上り、個別マッチング会およびネットワーキングも総勢12名が参加するなど、着実にその規模を拡大している。本稿ではそのイベントの様子を紹介する。

まず開会挨拶に登壇したのは、京都大学産官学連携本部副本部長およびオープンイノベーション機構副機構長であり、KSACにおいては起業活動支援評価委員会委員長を務める木村俊作。木村は、KSACの概要や前回のイベントに言及。Vol.01の個別マッチング会で、関西大学システム理工学部教授・田實(たじつ)佳郎の極細IoTセンサ「圧電組紐」に関心をもった広島県の担当者がデニムの産地として知られる同県福山市との連携を提案。実際に飼い主の留守中のペット見守りサービスの実現を目指し「福山デニム素材を活用したIoTペットウェアでの活動量の測定」の実証実験が行われ、メディアでも取り上げられた事例を挙げつつ、「プロダクトとマーケットがフィットする連携が、ひとつでも多く生まれることを心から願っている」と期待感を顕にした。

そして、木村に紹介される形で登場したのは、いずれも有力ベンチャーキャピタル(VC)に所属するゲストアドバイザーたち。日本最大級のVCであるジャフコ西日本支社長・高原瑞紀、大学発ベンチャーとディープテックに特化した Beyond Next Ventures執行役員パートナー・橋爪克弥、国内最大のスタートアップキャリア・フェア「Startup Aquarium」を開催するCoral Capital 創業パートナー・澤山陽平といった、錚々たる
面々が集まった。
左から、ジャフコ 西日本支社長・高原瑞紀、Beyond Next Ventures 執行役員パートナー・橋爪克弥、Coral Capital 創業パートナー・澤山陽平

左から、ジャフコ 西日本支社長・高原瑞紀、Beyond Next Ventures 執行役員パートナー・橋爪克弥、Coral Capital 創業パートナー・澤山陽平


この3名を迎えてのオープニング・セッション「アカデミック・イノベーション・パワー」では、「VCの立場から学術研究に期待するものは何か?」という問いが立てられ、それに対して、各人は次のように答えた。


「長期的な時間軸のなかで、大きな社会課題に対して日本の技術で解決を目指すアプローチ」(高原)

「アカデミアはテクノロジーやサイエンスが集積する場であり、日本のスタートアップの担い手でもある」(橋爪)

「世界レベルで戦えるハイパーグローバルな事業や技術」(澤山)

また、事業が「成功するために必要な要素は?」という問いに対しては、高原そして、10年近く高原と共に働いた経験をもつ橋爪の両名が、「人を惹きつけ、チームを巻き込む力が重要」と声を揃えた。自身の研究分野を突き詰めるだけでは社会実装に至らないケースも多く、周りの研究者や経営者らを巻き込むことで、チームとして研究の事業化を実現できるという。澤山もこの考えに同意し、言い換える形で、「ストーリーテリングの能力が重要」と述べた。創業社長の仕事は共同創業者から社員、投資家やビジネスパートナーに至るまで、「とにかく人の心を動かすことに尽きる」ので、そのためにストーリーを伝える力が求められると締めくくった。

注目を集めたヘルスケア分野の研究

オープニング・セッションが終わると、いよいよ研究者たちによるピッチプレゼンテーションが幕を開ける。


大阪公立大学大学院工学研究科教授の竹井邦晴は、「柔らかいフィルムセンサで未病の早期発見をめざして」と題し、独自の無機ナノ材料印刷を活用した貼付型センサシートによって皮膚表面からさまざまなバイタル情報を収集する"見守り電子皮膚"をプレゼン。湿布のような感覚で身体に貼って、活動量や心電図といった情報を計測・収集することが可能となり、医療・ヘルスケア分野におけるIoTプロダクトとしてウェルビーイングな社会の実現に寄与するという。

これに対し、ジャフコの高原は“IoT×ヘルスケア"は、ひとつのトレンドであり注目する分野だとしたうえで、より人々の心や行動を強く動かせるユースケースがあるといい、とアドバイス。そして、「ウェアラブルデバイスは、デジタルヘルス領域でも注目度が高い分野です。そのなかで、竹井先生が開発されているセンサシートは、実用性が高く、ウェアラブルデバイスの普及の突破口になり得る技術です。コア技術である半導体の素材開発は、日本が強い研究分野で、グローバルでも通用する技術になるポテンシャルがあると感じました」と、さらなる発展に期待を寄せた。



同じくヘルスケアの分野でプレゼンを行ったのは、関西学院大学工学部教授の山本倫也。山本は、眼球運動トレーニング「視るトレ」の社会実装を掲げる。日本ではあまり知られていないが、眼球の動かし方が苦手なことで文章の「読み」や球技が苦手な児童は多く、その規模は潜在的に1,000万人とも言われている。山本の事業では視線計測に関する独自技術をベースに、施設・家庭用システムや映像コンテンツ、データ解析を展開。本事業は子どもたちの発達障害の改善にもつながりうる、としている。

すでに起業に向けたチームの組成も始まっており、CoralCapitalの澤山も「単純な視力とは異なる『視る力』に着目した研究の意義がわかりやすく解説されていた。現代社会は視力偏重になっているというストーリーにも納得感があり、すでに実証実験を進めている児童向けのソリューションだけでなく、高齢者やeスポーツやなどさまざまな領域での応用が期待される。ビジネスとしてのポテンシャルを強く感じた」と太鼓判を押した。


兵庫県立大学大学院理学研究科准教授の菓子野康浩と京都大学大学院農学研究科教授・伊福健太郎による「持続可能社会のための珪藻の大量産生と販売」のプレゼンを挟み、京都大学消化管外科大学院生の谷亮太朗が掲げたのは「人工肛門排便制御デバイスの開発」。人工肛門患者(オストメイト)は、従来の人工肛門ではいつ便が流れ出るかわからず、袋に便をためて持ち歩かざるを得なかった。そのため日常生活で支障をきたすことも多く、こうしたオストメイトの「できたらいいな」を実現するとして、閉鎖機構や便意センシングといった機能を有する人工肛門の開発・研究を行っている。

谷のプレゼンを受けて、CoralCapitalの澤山は「人工肛門の患者がもつペインが明らかで、そのペインを解決するアプローチと感じました。難治性便失禁など、ほかの症例へも使えると(応用範囲が広い)とてもおもしろいと感じます」と、すでに存在するペインポイント(課題)に対する解決策として、またその応用展開の可能性も含めて評価した。



左から、大阪公立大学大学院工学研究科 教授・竹井邦晴、京都大学消化管外科博士課程3回生・谷亮太朗、関西学院大学工学部情報工学課程 教授・山本倫也

左から、大阪公立大学大学院工学研究科 教授・竹井邦晴、京都大学消化管外科博士課程3回生・谷亮太朗、関西学院大学工学部情報工学課程 教授・山本倫也


その後も、大阪公立大学工学研究科教授・東雅之の「パン酵母を活用した金属吸着剤の開発」、京都大学工学研究科博士後期課程・清瀬俊の「BREYOND5G社会を加速する、小さな原子時計の心臓部『ガスセル』の量産技術」、関西大学システム理工学部教授・小金沢新治の「橋の振動をエネルギーとして橋の老朽化を検知する電源不要なセンサシステム」といった、それぞれの専門性に特化したプレゼンが展開。

いずれも熱気に満ち溢れ、総評では澤山も「みなさんそれぞれが、プロジェクトのニーズや課題、そして社会的なインパクトをしっかりと話されていて、非常によかったと思います。何より、現場に機器を設置したりいろんな人に話を聞いたりと、何かを立ち上げるためにとにかく"行動"していたのが素晴らしかったです」と、感慨深げに振り返っていた。

最後に、閉会にあたって主催者を代表し、KSAC起業活動支援評価委員会副委員長であり、大阪大学共創機構イノベーション戦略部門ベンチャー・事業化支援室の室長を務める中村和彦が登壇。KSACの活動予算となる文科省JSTへの補正予算が5年間で、1,000億円レベルで承認されたことを受け、GAPファンドの一層の拡充や経営人材とのマッチングシステムの整備など、KSACのさらなる活動強化を約束した。特に今年度のGAPファンドプログラムでは新たに27のテーマが採択されており、事業化に向けてパートナーを求める研究シーズは数多く存在している。大学発のベンチャー起業を加速させる「NEXT PIONEER 2022-挑戦する次代の研究者たち-KSAC MATCHING DAY」のVol.3開催にも期待がもてそうだ。


京阪神スタートアップアカデミア・コアリション
https://ksac.site

Promoted by KSAC / text by Michi Sugawara / edit by Akio Takashiro

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