HR業界のアップルを目指す
ブアジズの競合企業に対する批評は手厳しい。「我々の実行力は、Papayasのような同業他社を上回る。我々は、非常に困難なことに取り組んでいるが、Ripplingsのように簡単なことにも取り組んだ方が良いかもしれない」と彼は述べた。ブアジズは、Deelを「HR業界のアップル」にする野心を抱いているが、資金力のあるライバルたちも彼やコンラッドのようにサービスを拡大しており、今後は激しい競争に直面しそうだ。将来的には、支出管理ソフトウェアを提供するBrex(評価額123億ドル)やRamp(81億ドル)、TripActions(92億ドル)などとも競合することになるかもしれない。
Deelは、2023年に売上高を倍増させ、2~4年以内に10億ドルに伸ばすことを目指している。ブアジズは、エマーソン・コレクティブの支援を受けることで、この目標を達成できると考えている。エマーソン・コレクティブの出資先の数社がすでにDeelの製品を使用しているほか、同社はDeelに非政府組織を紹介している。
「我々は、シリコンバレーに住むことができない優秀な人材に、シリコンバレーと同じような仕事の機会を提供できるテクノロジーに非常に関心を持った」とエマーソン・コレクティブでベンチャー投資を手掛けるサラ・ピント(Sarah Pinto)は述べている。
ベンチャー投資の活況の末期にDeelに高い評価額を付けたエマーソン・コレクティブのピントは、同社が急成長を遂げたことに安堵しているという。「Deelは、成長スピードにおいて常に異端児であり、評価におけるマルチプルは高めであって良いと考えていた」と、ピントは話す。それでも、Deelの株価売上高倍率(PSR)はまだ約40倍に達している。
Global X FinTech ETFインデックスによると、上場しているフィンテック企業の平均的なPSRは7.3倍であり、Deelが評価を正当化させるためにはやるべきことが多い。「我々は、過去のすべてのラウンドで100倍のマルチプルで調達していた。当時、売上高で評価を正当化させるために必要な成長を考えたら、ひどく怯えたことだろう。しかし、今では10倍にすることも十分可能だと思う」とブアジズは語った。
(forbes.com 原文)