ブアジズによると、HRソフトの難しさは、国ごとに合法的な運営方法を考えることにあるという。例えば、台湾とフィリピンでは面倒な手続きによって事業開始まで2年を要したという。ブアジズは、Deelが収益を急拡大できたのは、彼の父親で同社CFO(最高財務責任者)のフィリップが達成困難と考えていた目標を実行できたことが理由だと考えている。
「父は最初、100以上の事業体を持ち、他社の代わりに多くの人を雇うという事業プランを聞いて、私が正気ではないと考えていた。私は何度も父を説得しなければならなかった」とブアジズはいう。
パンデミックの追い風
パンデミックは、Deelにとって追い風となった。コロナ禍で、多くの企業が世界中の在宅ワーカーを迅速に雇用するため、高額な料金を支払ってDeelのサービスを利用するようになった。ブアジズは、2021年にフォーブスの「30 アンダー30」の金融部門に選出された。世界経済が後退する中にあっても、Deelは2022年に売上高を前年の5700万ドルから4倍以上に伸ばした。同社は現在、2000人以上を雇用し、12万人を管理している。ブアジズは、HRソフトウェア市場のより広いセグメントを開拓する準備が整ったと感じている。他のHRスタートアップの多くは、高い評価額を正当化するために提供プロダクトの拡大を目指し、競争が激化している。そんな中、Deelは給与計算やその他の簡単なHRニーズに応える新しいソフトウェアを開発し「Rippling」(評価額113億ドル)と「Gusto」(評価額100億ドル)に挑もうとしている。