ニューヨーク大学とジュネーブビジネス・人権センターの報告書によると、自動車やバッテリー、電子機器などの主要メーカーは、製造に使用するコバルトがコンゴの児童労働によって採掘されていないかどうかをほとんど確認していないという。コンゴでは、コバルト鉱山で多くの児童が危険な手掘りによる小規模採掘に従事させられている。
「コンゴは世界のコバルト産出量の約80%を占めるが、その20%は非公式な零細鉱山で採掘されている」と、報告書の作成に携わったニューヨーク大学スターン・スクールのビジネス・人権センターでディレクターを務めるマイケル・ポズナー(Michael Posner)は話す。テスラなどの企業は、児童労働によって採掘されたコバルトを調達していないと主張しているが「世界で使用されているコバルトの10%はこうした零細鉱山で産出されている。これは、膨大な量だ」とポズナーはいう。
自動車の動力源を、過去100年以上使ってきた石油から電気にシフトさせるのは大事業だ。莫大な量のバッテリーや電気モーターを製造するための工場を設立しなければならず、公共充電インフラのユビキタス化には数百億ドル規模の投資が必要だ。また、リチウムやニッケル、コバルトなどリチウムイオン電池に使用される金属は、需要過多により価格が高止まりすることが予想される。これらの課題に加え、EVシフトで難題となっているのが、コバルト採掘における児童労働の排除だ。
テスラは、毎年公表しているインパクトレポート(環境影響報告書)の中で、児童労働に対して「ゼロ・トレランス(断固容認しない姿勢)」を表明し、過去には「責任ある調達運営委員会(Responsible Sourcing Committee)」の代表団をコンゴに派遣し現地での採掘状況を視察したと述べている。同社は、最新の報告書の中で「コンゴ民主共和国の視察は、同国における人力小規模採掘(ASM)の複雑な問題とその歴史について、従来とは微妙に異なる見方を提供してくれた」と述べているが、詳細については触れていない。
「世界のバイヤーは、ASMによって採掘されたコバルトを避けようとしているが、大規模開発によって採掘されたものと分離することはほぼ不可能だという不都合な真実を無視している」と、ジュネーブビジネス・人権センターのディレクターで、今回の報告書の著者でもあるドロテ・バウマン-ポーリー(Dorotheé Baumann-Pauly)は声明の中で述べている。