同研究所が開発した新素材を使えば、水だけでリチウムイオン電池のセルをリサイクルできるという。これにより、バッテリーのリサイクルがより安価で安全なものになることが期待される。
リチウムイオン電池のセルは、電気を流す正極と負極を、接着剤のようなバインダーで固定している。同研究所が開発した素材は、市販されている2種類のポリマーから作った「クイックリリース」型のバインダーで、水酸化ナトリウムを含む室温のアルカリ水に浸すと溶けるという。
希少金属はこの溶液を濾過して回収し、空気乾燥させる。この方法であれば、焼却処理によって有害物質を放出する心配がない。
ローレンス・バークレー研究所は、既にオレゴン州ベンドに本拠を置くリサイクルスタートアップ「Onto Technologies」と商業テストを開始している。同研究所のシニア・サイエンティストであるガオ・リュウ(Gao Liu)によると、順調に進めば、2~5年以内にこの新しい結合材をリチウムイオン電池に用いることが可能になるという。
テスラの共同創業者であるJB・ストラウベル(JB Straubel)率いるレッドウッド・マテリアルズ(Redwood Materials)や、トロント本拠のライ・サイクル(Li-Cycle)は、北米に大規模なリサイクル施設を建設するために数十億ドルを調達しており、EVバッテリーの製造に必要な汎用金属の主要サプライヤーになることを目指している。
GMやフォード、テスラ、トヨタ、現代自動車、パナソニックなどの企業は、数年以内に新たなバッテリー工場を立ち上げる計画であり、リサイクル企業の取組みは非常に重要だ。
「今後10年間でリチウムイオン電池の生産量は年率30%ほどのペースで増える見込みだ。電池リサイクルも10年で非常に大きなビジネスに成長することが期待できる」とリュウは話す。
従来の10分の1のコスト
リチウムイオン電池は、排ガスや気候温暖化の原因となる炭素の排出をなくす点で優れているものの、焼却すると有害物質が発生する。例えば、テスラのバッテリーパックが燃えると、ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)などの有害物質が発生し、人体にさまざまな健康被害を及ぼす可能性がある。これに対し、ローレンス・バークレー研究所が開発したバインダーには、PFASは含まれない。「PFASを含まないバインダーの開発は困難だったが、未来にとって非常に重要なことだ。PFASは健康への影響が指摘されており、近い将来、規制当局もこれらの化学物質の規制に賛同するだろう」と、Onto Technologiesのスティーブ・スループ(Steve Sloop)CEOは声明で述べている。
ローレンス・バークレー研究所によると、このバインダーの価格は、現在最も広く使用されている2種類の製品の約10分の1だという。研究チームは、この素材がEV用以外にも、携帯電話向けの小型なものから、電力会社が蓄電に使用する大型なものまで、あらゆるサイズのバッテリーに使用できると考えている。
(forbes.com 原文)