そしてやっと迎えた静かな今春の到来、もう待ちきれないとばかり動き出した旅人たちは、大空に翼を広げ、海を渡り、時には列車を乗り継いで、再び世界を縦横無尽に駆け巡り始めている。
社会の最前線で活躍するエグゼクティブたちも、今、再び自由と平和、健康な日常に旅は欠かせないと強い思いを吐露する。
日本の2023年は、数えきれないほどの魅惑のホテルが新規開業をし、さらに、数々の老舗ホテルでも新たな戦略を披露する。
日本のホテルは今、一斉にドアを開けもてなしの準備に余念がない。
ホテルジャーナリスト せきねきょうこ
3月、早春の倶知安町ニセコのグランヒラフ地区(以下ニセコ)を訪ねると、英語や世界中の外国語が飛び交い、残雪の高い壁に挟まれた道路を歩く人々も日本人に出会う方が珍しい。コロナ感染症のパンデミックにやっと長いトンネルの入り口が見え、ニセコは噂以上に世界中からの観光客やリゾートへの長期滞在の人々が訪れていた。
ホテルやコンドミニアム、レンタルヴィラなど、ニセコの建物の趣は今までの日本型リゾート地とは趣を違え、欧米のリゾート地に居るような印象に包まれる。そんな街のこの中心に、日本市場への初進出を遂げたラグジュアリーホテル「雪ニセコ」が建っている。
開業は2022年12月、初めてのハイシーズンを終えようとしていた新しいホテルを訪れた。開発はシンガポールの大手ラグジュアリーデベロッパー「SC グローバル・デベロップメンツ(シンガポール)であり、営業形態は、コンドミニアム型ホテルとして管理運営されている。
すでに投資目的で所有するオーナーのいる部屋も有るものの、利用するゲストは一般のラグジュアリーホテルと何も変わらぬ滞在が可能だ。シンプルモダンで設備の充実した客室は、それぞれに使い勝手の良いデザイン、高級感のある家具・調度品が施され贅沢な広さのある客室として提供されている。
客室は40平方メートルのスタジオタイプから、5ベッドルームにプライベート温泉付きというウルトラ・ゴージャスなペントハウスまで、様々なタイプが揃い選択肢が充分に揃う。和洋折衷の客室デザインにより、外国人には部屋に造られた‘畳の間’が好評だ。
今流の畳の部屋は、高級イ草の風合いがあり、同時に機能性を持つ新しい時代の高機能畳表「MIGUSA」を使用するなど、日本が誇る確かな上質感が表現されている。室内のフローリングは固いナラ材の白木で統一されているのが快適だ。
一方で、スタイリッシュなチャコールグレーが目立つロビー中央には、大型の暖炉が設置され、もうひとつ壁内にも暖炉が造られている。夕暮れ時にはこの2カ所の暖炉に火が点され、暖かな印象の炎のお蔭でロビー内の雰囲気は一変する。
世界の建築家TOP100にも選出されたデザイナーのモク・ウェイウェイ氏は、ロビーのコンセプトとして「伝統的なアルプスのスキーホテルを和モダンでコンテンポラリーに仕上げた」と語ってる。確かに、ホテルに到着した際には、筆者がかつて仕事で長い間居住したスイスの世界的スキーリゾート地を想い、とある高級ホテルのロビーを思い浮かべた。