資産運用

2023.03.22

税理士の4割が興味を示す「家族信託」、需要増加に応える体制作りが急務

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認知症が心配される家族の資産を、本人に代わって子どもや親戚が管理できる「家族信託」という制度があります。高齢化にともない需要が高まっているこの制度をサービスに取り入れたいと考える税理士が増えていますが、同時に悩みもあります。

家族信託は2007年から施行されている制度です。資産を持つ人が認知症になって十分な意思疎通や判断が行えなくなると資産が凍結され、家族は手を付けられなくなります。それを解除するには成年後見制度を使うことになりますが、手続きが複雑で費用もかさみます。また成年後見人は財産保護のための資産運用や生前贈与が許されず、途中で止めることができないなどの制約が多いというデメリットもあります。そこで、比較的簡単に手続きが行えて資産運用の自由度も高い家族信託が注目されているのです。

この家族信託をスマホアプリを活用して安価に安心して運用できる「スマート家族信託」を提供するトリニティ・テクノロジーは、133人の税理士を対象に家族信託に関する意識調査を行いました。すると、4割以上の税理士が家族信託に取り組みたいという意欲を見せた反面、約6割が「家族信託の提案は難しい」と答えています。

家族信託の相談を受けたことがある税理士は28.5パーセント。家族信託の提案をしたことがある税理士は22.5パーセントでした。まだ少ないようですが、税理士の10.5パーセントは、今後家族信託に「積極的に取り組んでいきたい」と考えていて、「取り組んでいきたい」という人たちも39.1パーセントと大きな関心を示しています。

ところが、約6割の税理士が、家族信託の提案は難しいと答えています。理由を尋ねると、知識がないのでお客さんの質問に答えられない、連携できる士業がない、信託契約書の作成や不動産の登記などの手続きに対応できない、といった意見が見られました。制度の歴史が浅いために、まだ準備が整っていないようです。家族信託について顧客に聞かれたときに適切に答えられているかという問には、できていると答えられた税理士は、およそ2割に過ぎませんでした。

また、家族はさまざまなのでベストな提案ができない、理解してもらえない、家庭に踏み込めないといった、相談を受ける側の問題も指摘されました。遺産分割で仲の良かった家族がケンカを始めるという話はよく聞きます。家族信託でも、誰が信託者になるかで揉めることがあるようです。そうした家族間の問題は税理士の専門外です。
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文 = 金井哲夫

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