アメリカンクッキーとは、アメリカの家庭でつくられるクッキー。その定義は様々だが、一般には「セサミストリート」のクッキーモンスターが持っているような、大きくて丸いものが想起される。
アメリカンベイクショップ「ovgo Baker」(OVGO社)の創業者・溝渕由樹が憧れたのも、そんなクッキーだった。学生時代から“納得の味”を求めて、趣味でアメリカンクッキーを焼いていた溝渕だったが、「ovgo Baker」では、それを植物由来の原料のみでつくることに成功。そのおいしさが、OVGOの成長の柱になった。
本連載「OVGOの軌跡」では、創業者の溝渕へのインタビューを中心に、OVGOの成長の軌跡を辿る。第2回となる今回は、多くの人の心を掴む「商品」の魅力に迫る。
>>第1回
「プラントベースは美味しくない」を変えたい
1番人気は、ソフトな食感が特徴のチョコチップクッキー。ほかにも、ザクザク食感のオートミールクッキーやスパイスフレーバーなど、多様なバリエーションのクッキーを展開。2022年10月からはサブスクリプションサービスもスタートした。原材料はプラントベースでそろえ、米油、豆乳、ナッツミルクなどを使用している。バターや卵、牛乳などの動物性のものは一切不使用だ。
また、できる限り国産やオーガニックの食材を使用し、輸入や生産にかかる環境負荷が少ない手段でお菓子づくりを行っている。そのうえで、1枚あたり300円~400円の手に取りやすい価格に抑えている。
ただ、溝渕が生粋のクッキー好きということもあり、味への妥協は一切許さない。「プラントベースはおいしくない」というイメージを変えたいという強い思いもある。
「卵やバターを使った一般的なクッキーよりもおいしくなければ、商品化には至りません。せっかく自分たちでつくるならば、他では食べられない味と、見た目もおいしいクッキーでありたいと思っています」
これまで、プラントベースのクッキーは、ヴィーガンや食品アレルギーを持つ人をターゲットにつくられることがほとんどだった。だからこそ、卵やバターを使ったクッキーにくらべて、“おいしくない”と感じてしまうものも多かった。OVGOのクッキーがおいしいのは、そうではないからだ。
「ターゲットをヴィーガンなどに狭めず、すべての方に気に入ってもらいたいと考え、納得のいく味を追求しています」