また、中国の総合的なサプライチェーンと成熟したモバイルコマースノウハウを活用し、海外市場にも積極的に進出しています。
本稿では、Sheinの最近の主な事業戦略や事業拡大計画を分析し、同社の競争力のあるリアルタイムビジネスモデルの主要要素を取り上げ、他の大手ファストファッション企業2社、英国を拠点とするASOSとBoohooとの比較を行っています。
世界中の小売企業がSheinの継続的な成功から、より革新的な小売モデルや戦略を取り入れることを期待しています。
市場規模とビジネスチャンス
Coresight Researchの推計によると、Sheinの2022年の世界売上高は222億ドル(前年比約50%増)で、世界のファストファッション市場の主力企業としての地位を確立しました。なお、売上の約3分の1は米国におけるものです。これに対し、ASOSの2022年8月31日締めの会計年度の売上高は前年比0.7%増の39億ポンド(54億ドル)、Boohoo Groupの2022年8月31日締めの直近12ヶ月の売上高は前年比0.8%減の19億ポンド(25億ドル)でした。
また、オフラインのファストファッション小売業者であるInditex(Zaraの親会社)は、2022年10月31日までの12ヶ月間の売上は前年比22.6%増の314億ユーロ(309億ドル)でした。これらのデータから、2022年のSheinの推定売上高成長率は、主要競合企業の売上高成長率を大幅に上回っていることが示唆されます。
Shienの2022年の世界のファストファッション市場におけるシェアは18%と推定されますが、2023年以降も海外事業の強化、顧客基盤の拡大、品揃えの拡充といった成長戦略により、さらなるシェア獲得に向けた体制が整っていると思われます。
また、本稿で取り上げた2023年1月のCoresight Researchの独自調査データでは、米国の消費者間でShien製品への強い需要があることも裏付けられています。
Sheinは、リアルタイム小売モデル、競争力のある価格設定、積極的なソーシャルメディア運用、ブランド戦略、サプライチェーン戦略などを引き続き活用していくでしょう。
SHEINの事業戦略と事業拡大計画
会社概要
Sheinでは、アクティブウェア、ボトムス、ドレス、ルームウェア、ナイトウェア、スイムウェア、トップスなど、幅広いアパレル、フットウェア、アクセサリーを販売しています。また、最近では美容関連や家庭用品のカテゴリーを大幅に拡大しています。図1. Sheinの会社概要
出典:企業レポート/Financial Times/Outdoor Favor/Coresight Research
米国消費者間でのShein製品への需要が堅調に推移
米国では、あらゆる年齢層の消費者がかなり高い割合で、Sheinのプラットフォームを通じてアパレルやフットウェアを購入しています。2023年1月9日に行われたCoresight Researchの米国消費者調査によると、SheinはFoot Locker、Nordstromと並んで、米国で13番目にアパレルやフットウェアの購入が多い小売業者またはプラットフォームとなっています。
アパレル購入者の8%が、過去3ヶ月間にSheinを通じて商品を購入したと回答しており、大手専門小売のAmerican Eagle、Abercrombie & Fitch、Gap、H&M、Lululemon、Zaraを上回っています(図2参照)。
図2. 米国のアパレル消費者が過去3ヶ月間にアパレルまたはアクセサリーを購入した小売業者(回答者の割合)
(図内の訳、コメント「Sheinは、大手専門小売の数社を抑えて米国で13番目にアパレルやフットウェアの購入が多い業者となっている」)
対象:2023年1月9日までの3ヶ月間にアパレルまたはアクセサリーを購入した18歳以上の米国人回答者304名
出典:Coresight Research