経営・戦略

2023.03.23 08:10

SHEINの事業モデルから、世界が学ぶべきこと

SHEIN公式サイトの画面

このファンドは、サプライヤー・コミュニティ・エンパワー・プログラム(SCEP)の一環として、生産面での廃棄物を削減し、サプライヤー工場の労働条件全般を改善することを目的としています。SCEPの一環として、2022年12月には、2026年までにサプライチェーン内の400近い工場のアップグレードに向けて1500万ドルを投資すると発表し、2023年末までに100のアップグレードを完了させるとしています。
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同社によると、このアップグレードは、今後3~4年の間に、同社のサプライヤー工場の従業員の安全な労働条件を確保することに重点を置いているとしています。

また、2022年10月、消費者がこれまで所有していたSheinのアパレルを売買できる再販プラットフォーム「Shein Exchange」を米国で立ち上げ、2023年には、他のグローバル市場にも拡大する計画を発表しました。立ち上げに際して、SheinのESGグローバル責任者であるAdam Whinston氏は「当社の成長するコミュニティのリーチと影響力を活用することで、再販が我々の業界における新しい常識になると信じています。」と述べています。

SheinのESGの取り組みは改善の余地がまだまだあるものの、最近のサステナビリティへの取り組みやZ世代へのアピールは、IPOの際の株式上場のためにかなりの投資意欲を生み出すと思われます。
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2022年10月に再販プラットフォームShein Exchangeを開始
出典:企業ウェブサイト

実店舗

オンラインストアモデルが売上面で好調な一方で、Sheinは実店舗の展開も開始しています。2022年11月には東京に初の常設実店舗をオープンしました。このオープンは、日本をはじめ、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、スペインなどの海外市場における同社のポップアップストアの好評を受けたものです。

広さ2153平方フィートの新しい常設実店舗では、店内イベントや消費者向けのフォトブースが設置されており、一般的な小売店とは異なり、顧客は商品のQRコードをスキャンし、ウェブサイトを通じて商品を注文し、決済後に商品を受け取ることができます。

近年の動向

以下では、Sheinの最近の主な動きを一覧で紹介します。

図4. Sheinの近年の動向
出典:Business of Fashion/Fashion.ie/Pandayoo/Stylus/Tech in Asia/TheIndustry.fashion

WHAT WE THINK

Sheinは、近年目覚ましい成長を遂げ、ファストファッション市場に旋風を巻き起こしており、近い将来、世界のファストファッション市場において、圧倒的な存在感を示すとみられています。

新ブランドの立ち上げによる新商品カテゴリーの拡大や、マーケットプレイスのバンドワゴンへの参入など、最近の施策は、同社の総販売可能市場の拡大に向けた確かなステップだと思われます。

また、米国とカナダに最近開設した物流センターにより、近い将来、受注処理能力が大幅に拡大されるとみられています。

一方、サステナビリティに関しては依然として重要な課題を残しています。最近では、再販プラットフォームの立ち上げや、サプライヤーの工場のアップグレードへの支出など、目に見える形での取り組みを開始していますが、サステナブルな調達、工場労働者の適正賃金や良好な労働条件の確保という点では、まだ長い時間がかかるでしょう。

ブランドや小売企業にとっての意味合い

・アパレルブランドや小売企業にとってSheinの事業モデルは、オンデマンド技術をファッションの世界に取り入れるという点で、良い参考となるでしょう。ブランドや小売企業は、主に調達ミックスの再検討や革新的なテクノロジーへの投資、フルフィルメントモデルのアップグレードによって、より弾力的で柔軟なサプライチェーンを構築する必要があります。

・AIと人間による判断力を組み合わせることで、ブランドオーナーや小売企業は、効果的なパーソナライゼーションを通じて、消費者のこれまでのアパレル購入体験を覆すことができます。

・ファストファッションブランドや小売企業は、公正でサステナブルな工程で製造された製品を購入したいという最近の消費者のニーズを理解する必要があります。倫理的かつサステナブルな方法を採用することで、ファストファッション企業は競合との差別化を図り、消費者、投資家、従業員を惹きつけることができるでしょう。

テクノロジーベンダーにとっての意味合い

・イノベーターは、倉庫管理、フルフィルメント効率、保管能力に関する自動化およびロボット技術を通じて、小売企業と提携できる大きな可能性があります。


※この記事は、2023年2月にリリースされたRxR Innovation Initiativeからの転載です。

文=RxR Innovation Initiative

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