そして、インランドエンパイア(カリフォルニア州チェリーバレー)に180万平方メートルの物流施設を2023年第1四半期末までに開設するなど、米国でさらに2つの物流施設を開設する予定です。
2022年11月にカナダに17万平方メートルのオフィスと物流施設を開設
出典:Coresight Research
このように、Sheinは欧米での販売力を強化するために様々な取り組みを行っていますが、現在でも大半の注文はお客様のリアルタイムの要望に基づいて中国の工場から直接出荷しています。
その結果、欧米からの注文への対応には、昨年の10~12日よりは改善されているものの、いまだに8~10日かかっており、ASOSやBoohoo Groupが提供する配送サービスに比べるとかなり日数がかかっているのが現状です(図3参照)。こうした配送にかかる時間はShienにとって大きなマイナス要素となっています。
図3. ASOS、Boohoo、Sheinのエクスプレス注文にかかる配達時間
2023年以降のShein Xの大きな成長
Sheinは、独立系ファッションデザイナーを発掘・支援し、コラボレーションやターゲット層の拡大の機会を提供するインキュベータープログラムである「Shein X」を大規模に成長させようとしています。同社は、Shein Xを通じて独立系ファッションデザイナーに対し、運営、製造、マーケティング、資金面でのサポートを提供しています。デザイナーは利益の一部を受け取り、作品の所有権を保持します。
2021年初頭から、SheinはShein Xを通じて約3000人のデザイナーやアーティストを雇用するために5500万ドル以上を投資してきました。2023年にはさらに1000人のファッションデザイナーを雇用し、プログラムを大幅に拡大することを視野に入れています。
Shein Xプログラム
出典:企業ウェブサイト
戦略的重点項目
新たな資金調達と米国でのIPO計画2023年1月18日のフィナンシャル・タイムズで、現在Sheinは、2022年4月の1000億ドルから約36%ダウンした評価額640億ドルで30億ドルの資金調達を行っていると報じられました。Sheinはプライベート・エクイティ企業のGeneral AtlanticやベンチャーキャピタルグループのSequoia Chinaなどの既存投資家から新たな資金調達ラウンドを成立させようとしています。
また、同じくフィナンシャル・タイムズによると、Sheinは2023年にIPO(新規株式公開)を通じてニューヨーク証券取引所(NYSE)に株式公開する計画を再開させているといいます。2022年11月にはIPO計画に向けて、元Bear Sternsの投資銀行家Donald Tang氏を取締役副会長に採用しています。
また、これに続き、2022年2月には、シンガポールの政府系ファンドであるTemasekに10年近く在籍していた経歴をもつ、Leonard Lin氏を政府関係のグローバル責任者に任命しています。
2022年初頭、中国の厳しい海外上場規制をかわすため、Sheinは本社をシンガポールに移転し、株式上場のための投資銀行としてBank of America、Goldman Sachs、JP Morganを採用したと伝えられています。もしこれが実現すれば、SheinのIPOは、2021年7月に中国の規制当局が海外上場を締め付けて以来、中国で設立された企業による米国での初の大型株式取引となります。
高まる批判の中でのESGへの取り組み
製造工程に関する透明性の欠如や衣料品廃棄の問題で繰り返し批判にさらされてきたSheinは、2022年6月に5000万ドルのファンドを立ち上げるなど、環境・社会・企業統治(ESG)の取り組みに向けて、最近目に見える形で取り組み始めました。