すると、仮想通貨企業と数多くの取引をしていたシグネチャー銀行でも取り付け騒ぎ(金融機関や金融制度に対する信用不安から預金者が預金や掛け金などを取り戻そうとして、急激に金融機関の店頭に殺到し、混乱を来す現象)が起きて、結局シグネチャー銀行も経営破綻した。
このように立て続けに米国の銀行が経営破綻したことがトリガーとなり、今度は欧州の投資銀行であるクレディ・スイスも経営に対する懸念がくすぶり、株価は一時マイナス30%を記録した。
いま、これが2008年のリーマンショックのような世界的な金融危機につながるのではないかと、世界中が戦々恐々としている。
韓国の国民年金公団に暗雲
そんななか、韓国も「対岸の火事」とはいえない立場に追い込まれている。なぜなら、韓国の人たちの老後を支える国民年金公団が、SVBやシグネチャー銀行の株を保有しているからだ。さらに同公団は、シグネチャー銀行の次に危ぶまれているファーストリパブリック銀行の株も保有しており、暗雲が漂っている。昨年末基準で、国民年金公団はシリコンバレー銀行の親会社であるSVBグループの株に2300万ドル(約30億円)を直接投資し、7300万ドル(約95億円)を委託投資した。債権に委託投資した171億ウォン(約17億円)もある。
米国証券取引委員会(SEC)によれば、韓国の国民年金公団は、同じく昨年末基準で、米国のファーストリパブリック銀行の持ち株を25万2427株保有していると申告した。評価額は、昨年末基準3077万ドル(約40億円)で、委託運用の基金を含まない直接運用投資としてだ。
国民年金公団は、韓国国民から年金を任せられている公団で、ここの運用によって、韓国の人たちの老後の資金が決まるとも言える。それだけに投資には慎重さが要求される。それなのに、今回、回収できないかもしれない投資をしたというのは、韓国国民の老後を危うくしているということになるのだ。
また、ソブリン・ウェルスファンドの韓国投資公社(KIC)も、昨年末基準でSVBの株を11万株も保有していると発表した(そのうち9万株を昨年のうちに売却済み)。KICは、SBVだけでなく、シグネチャー銀行の株も9万株以上を保有しており、国民年金公団も同行には一部投資しているという。
米国政府は預金に関しては、全額保証すると言っているが、投資金に関しては回収できない可能性が高い。
韓国の国民年金公団は、昨年、米国の通貨引き締めやロシアのウクライナ侵攻によるグローバル金融市場不安のため、歴代最低であるマイナス8.22%の収益率を記録した。昨年末基準で、基金の積立金は890兆4千億ウォン(約89兆円)と前年対比58兆ウォン(約5兆8000億円)も減少した。これでは韓国の人たちの老後が心配である。