釣り具メーカーの本気。「海を守るため」の服づくりとは

グローブライド 執行役員の小林謙一

グローブライド 執行役員の小林謙一

使われなくなった漁網を、「服」に生まれ変わらせている企業がある。フィッシングブランドの「DAIWA」を展開するグローブライドだ。

この取り組みは、同社の「BE EARTH-FRIENDLY -漁網アップサイクル産学連携プロジェクト-」でスタート。3月に「DAIWA」とアパレルブランド「D-VEC」で商品化された。

この取り組みの背景には、1958年創業の釣り具メーカーとして、長年「釣り」の現場を見てきたからこその課題感がある。グローブライド 執行役員の小林謙一に、本プロジェクトへの想いを聞いた。

なぜ「漁網」のアップサイクルなのか

同社が海洋ゴミ問題に注目したのは、数十年前のこと。最も長く続けている活動は、日本釣振興会が1994年から10月の「水辺感謝の日」に実施している釣り場の清掃活動だ。

「釣り場となる海が汚れていると魚が減り、釣り人も減ることによって事業にも悪影響がある。そこで、まずは釣り人が落としていくゴミをどうにかしようと、組織的に始めました」

2009年には、自然がフィールドであることを表現した企業スローガン「Feel the earth.」を制定し、「BE EARTH-FRIENDLY活動」の一環として、環境保全活動全般を加速させている。

そんななか小林は、2020年ごろに「漁網」のアップサイクルの仕組みが構築できるということを知り、挑戦しようと考えた。幼いころから釣りが好きで、漁師との交流もあり、漁網に様々な課題を感じていたからだ。

漁師が使い終わった漁網をリサイクルする際には、付着物の除去、フロートやおもりの回収、切断、プラスチック素材ごとの分別などの作業がある。特にフロートやおもりを一つひとつ手作業で外すのは大変で、そのまま埋め立てる方が遥かに簡単であることから、漁師からも「リサイクルは手間がかかる」という声があがるなど、なかなか進まないという現状がある。
廃棄になった漁網

廃棄になった漁網


「海洋プラスチックごみの約4割が、漁網やロープなど漁業に関するものに由来すると言われています。そこで、釣り具メーカーとして取り組む必要があると考え、リサイクル会社が開発した、廃棄漁網をリサイクルして製糸化した上で再利用する技術を用い、商品化する漁網アップサイクルプロジェクトを推進しました」

そのプロジェクトで小林が重視したのが、廃棄漁網のリサイクルから高付加価値化した製品の開発までに、一貫して携わることだ。

「アパレル業界では、ペットボトルなどのプラスチック製品をリサイクルして生地にするという取り組みはありますが、ブランドが生地の製造段階から携わっているケースはほとんどありません。当社では、お客さまに廃棄漁網をリサイクルする過程から知ってもらい、できあがった製品にも、付加価値を感じてもらいたいと考えました」
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文=三ツ井香菜 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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