政治

2023.03.21

アフリカへの関与を強めるロシア 得をするのはどっち?

ブルキナファソで開かれた親ロシア派の集会で、両国の協力を促すシャツを着た支持者(Getty Images)

とはいえ、ロシアによるアフリカとの関係維持の努力の一部は成功している。例えば、サハラ砂漠南縁のサヘル地域の支配層がイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の関連組織に対抗するための資源や力を確保しようと奔走する中、同地域へのロシアの関与は、マリにおけるフランスの影響力をしのぐほどになっている。ロシアはアフリカでの計画を遂行するために、ワグネル・グループを含む自国の民間軍事会社の利用を進めている。

ワグネルは自国のウラジーミル・プーチン大統領との直接のつながりを持ち、大きな影響力でマリの政策を揺さぶっている。オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所への提訴が望まれるワグネルが犯した犯罪の中には、同社がマリ産の鉱物、特に現代の環境技術に欠かせないレアアースを独占したことなどがある。中央アフリカ共和国でも、ロシアの傭兵がレアアースの鉱区を採掘していた。同国ではロシアの傭兵が大統領のパレードも先導するなど、国家の実権を握っていることを示した。

戦略的に重要な紅海地域では「アフリカの北朝鮮」と呼ばれるエリトリアが支配を維持するために、ロシアの国内治安機関に依存している。その対価として、エリトリアは天然資源や鉱物の利権のほか、国連での投票でロシアに便宜を与えている。隣国スーダンでは、ロシアが紅海に自国の海軍基地を建設することを視野に、スーダンに対する武器輸出を停止するなど多大な政治的圧力をかけている。

このように、ロシアはアフリカ全土で、西側諸国との新たな政治経済関係の構築を阻止するための破壊勢力の一翼を担う一方、中国に対しては交渉上の立場を築いている。そうすることで、アフリカの開発の遅れを助長しているのだ。こうした策略は弱さの表れであり、あからさまな搾取だと認識しなければならない。

このような破壊的な取り組みを行い、長期的な関係を壊し、アフリカ大陸を飢餓に陥れると脅すことは、ロシアが弱く、反欧米イデオロギーに根ざしているためだ。これは、他の方法では影響力を行使することができないために、欧米や国際社会全体の民主主義秩序を弱めようとする絶望的な勢力の行動だ。アフリカの人々が自らの大陸の未来を考えるのであれば、ロシアの行動の危険性を認識しなければならない。アフリカにおけるロシアの影響力に対抗する最善の方法は、アフリカの人的資本に投資しながら、同地域と欧米の安全保障や資源、貿易による結びつきの発展を促すことだ。そうしなければ、アフリカと西側諸国は、ロシアによる組織的な地政学的不安定化作戦に真っ向から対抗することなどできないだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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