また地理的にも、ロシアの資本投資は戦略的に重要な一部の市場に集中している。例えば、ロシアは「アフリカのシンガポール」と呼ばれるルワンダの驚異的な躍進に着目し、同国のインフラ整備や原子力部門にまで投資の手を伸ばしている。これにより、アフリカの他の国々もルワンダに倣い、ウラン生産やロシア国営原子力企業ロスアトム製の原子炉購入などでロシアと提携することが期待されているのだ。
紅海の入口という極めて重要な位置にあるジブチでは、ロシアが以前から海軍基地の設置に関心を示しており、同国での影響力の強化を図っている。まさに19世紀の「グレートゲーム」(訳注:19世紀に中央アジアの覇権を巡って繰り広げられた英露の抗争)を彷彿とさせる地政学的な争奪戦において、ロシアは米中をはじめとするジブチに軍事基地を持つ他の8カ国と肩を並べようとしているのだ。
ロシアはまた、自国のロスネフチやガスプロムといったエネルギー企業による投資を利用して、アルジェリアやモザンビーク、カメルーン、ガボンの欧州への石油・天然ガス輸出を妨害しようとした。
筆者が拙著『ロシア帝国主義 発展と危機』(仮訳)で概説したように、過去数世紀にわたるロシアの周辺地域への拡張主義的な侵攻の原点は、同国の不変かつ執拗なまでの帝国主義的な意図に根ざしている。
しかし、ロシアが自国の力量を超えてアフリカへの関与を強めても、アフリカの大部分はロシア政府から遠い存在であることに変わりはない。なぜならロシアには、欧米や中国のようにアフリカの国家政策に決定的な影響を与えられるだけの経済力がないからだ。