フランスのコルベール委員会、イギリスのウォルポール、イタリアのアルタガンマ財団が有名ですが、ドイツにもマスタークライス、スウェーデンにはグスタフ3世委員会、スペインにはサーキュロ・フォーチュニーがあります。
各企業の製品の品質と創造力を各国の組織が保証、さらにはこれらの団体が主に「欧州文化・創造産業連盟」を通して世界的なラグジュアリーネットワークを形成することで、各国はラグジュアリーを生みうる国としての文化的威光も高めています。
日本が同様のことをやる必要はないにしても、日本の文化に裏打ちされたラグジュアリー製品を世界に売っていくのならば、それを内外にラグジュアリーとして認知させ奨励するなんらかの組織があるに越したことはないのではと思います。
この点に関し、最も現実的な答えを持つ一人が、現在の環境副大臣である山田美樹さんです。経済産業省の出身、コロンビア大学でMBAを取得し、ボストン・コンサルティング・グループで働いた経験をもち、エルメスジャポンで4年間務めたあと、衆議院議員になり4選という経歴です。取材を快諾いただき、衆議院議員会館で話を伺いました。
山田美樹さん(以下敬称略):ラグジュアリービジネスを統括する組織ですね。日本でも試みた人は何人もいたようですが、うまくいっていません。
そもそもラグジュアリーの定義が日本できちんとできてないことが問題です。代表的な日本のラグジュアリーは何か、と問われたら、答えに窮してしまいます。ふるさと名物を地元の贅沢品だからとねじこまれても困るでしょう? 定義を明らかにし、どういう基準を満たした人や企業が集まるのか、そこを考えるところからでしょうか。
中野:鑑識眼のある人々が、忖度、情実なしに選別することも必要ですね。「クールジャパン」失敗の原因の一つは何でもありにしてしまったことという報道を見ると、風通しの良いコミュニティを日本で作ることは可能なのだろうか、と思うこともあります。
山田:どうやってコミュニティを作るかということですよね。私はたまたま以前エルメスで働いていたという、政治家としては珍しい経験のため、ファッション業界から様々なご要望をいただきますが、みなさん問題意識は同じなんです。
日本からラグジュアリービジネスを成功させたいという多くの方々と出会いましたが、その方々が結びついていかないのです。この人たちが結集すれば強いと思うのですが。ライバル関係もあるだろうし、感性の仕事だから個性が強く、好き嫌いも大きいかもしれません。また、自分の意見や体験を雄弁に語るだけでなく、他の方の話を聞く力、多くの意見をまとめる力も必要になってきます。
中野:製造、流通、販売、教育、PR、ジャーナリズムなど、どの領域でラグジュアリーと関わってくるのかによっても意見は異なりそうです。