アート

2023.03.16

都市にカルチャーが生まれる「場所」をつくるには?

(左から)吉田山、井上岳

アート・アンプリファイア(増幅器)として、アートスペースの立ち上げや展覧会のキュレーションなどを行う吉田山と、建築家で建築コレクティブ「GROUP」を共同主宰する井上岳。アート、建築という互いの専門領域を越えて協働することも多い。

2人は、現在渋谷で開催されている、XR技術を活用した国際的な都市型展覧会「Augmented Situation D」(シビック・クリエイティブ・ベース東京主催)に共同ディレクターとして参加。世界最先端のXR技術をつかって、渋谷の街を「拡張」する取り組みを行っている。

次世代を切り開く表現者たちはいかに誕生し、どこへ向かうのか。


——お二人がアートや建築に興味を持ったきっかけは?

井上:僕は山梨出身で、東京の暮らしに憧れていました。建築に興味を持ったきっかけは、進学先を考え始めた高校生のころに読んだ『STUDIO VOICE』の建築特集です。

当時の僕は、建築といえば、安藤忠雄さんがつくるようなコンクリート造りのかっこいいもの、というイメージを持っていたのですが、その特集でSANAA(Sejima and Nishizawa and Associates)を知り、こんなに軽やかな建築の表現もあるんだと感銘を受けました。

そこで、自分もこんな建築をつくりたいと、建築が学べる大学に進学。その後は、石上純也建築設計事務所に就職。那須塩原のアートビオトープ那須の「水庭」などを担当しました。

4年在籍しましたが、石上さんは建築家でありながら「これは建築、これはアート」と線引きをせず建築を設計している方で、大変影響を受けました。

元々、アートは自由につくれるものだと思っていたのですが、そうでもないなと気づいたんです。展示する場所が決まっていたり、火や水が使えなかったりなどの制約もある。予算も、建築より厳しいこともあります。そうした考えのもと、建築としてアートを捉えて設計しています。

吉田山:実は僕も、原体験になったのは石上純也建築設計事務所の作品で、2007年に東京都現代美術館の展覧会で観た「四角い風船」です。

1トンくらいある巨大なアルミの構造物をヘリウムで浮かせた作品で、吹き抜けのフロアの空間いっぱいに展示されていたのですが、こんな破茶滅茶なことが許されるんだと衝撃を受けました。そこが現代美術館だったから「これが現代美術なのか」と思い、こういう前人未到なことができるならと、アートに興味を持ちました。

僕は富山出身で、自然が豊かなのですが、囲まれすぎてうんざりしていました。自然は圧倒的に美しくて、すでに完成されていて、自分が関わる余地がない、それでいて破茶滅茶なものの集合でもある。だからこそ、浮かぶ巨大なアルミのように人が手がけたアートに興味を持ちました。
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨 撮影=杉能信介

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