ここ10年ほどでソーシャルメディアユーザーはますます増え、インターネットの海で自分語りを繰り広げては、今乗っている飛行機や自宅近くの寿司店、政治討論に参加している論客などについて、気に入らない点をあげつらうようになった(ちなみに、人は誰でも否定的になりがちな性質があるので、発信する内容はたいてい気に入らないことだ)。
その結果、私たちは今や世界中で1日あたり120億時間以上をソーシャルメディアに費やしている。
この統計値は、ダン・ライオンズの新著『STFU: The Power of Keeping Your Mouth Shut in an Endlessly Noisy World(無限に騒がしい世界で口をつぐむ力)』で読んだものだ。実はこの本には、ソーシャルメディアに触れている時間は1日あたり100億時間と記されているのだが、出典を調べたところ実際のデータは120億時間(あるいは140万年)に増えていた。
その理由を確かめるには良い機会かもしれない。
ライオンズは、みんなおしゃべりになりすぎているからだと指摘する。私もどちらかといえば同意見だ。私たちは地元のスポーツチームについて投稿し、次に天気に文句を付ける。ついついFacebook(フェイスブック)のコメント欄やTwitter(ツイッター)のリプライに引き寄せられ、議論の余地のある話題であるほどその傾向は強まる。私は、人々がどんなコメントを書き込むかを予測するのが特技になってしまった。
先日も、父親が子どもにテーブルの上に飛び上がる方法を教える動画がフェイスブックに公開され、何千ものコメントが付いていた。ほとんどの人が、予想に違わず、子どもが転落するかもしれないと抗議していた。それはそのとおりなのだが、1000件も抗議コメントが必要だろうか。もし、1件目のコメントを後の999人がチェックしてさえいたら、問題がすでに指摘されていることに気づいて次の話題に移れたかもしれない。そうすれば、100万時間くらい節約できたかもしれない。
ライオンズの新著は、この問題にどう対処すればいいかを見事に説明している。ソーシャルメディアに関する章で提示されたヒントはどれもすばらしいが、私がいちばん好きなのは「WAIT(待つ)」について書かれた箇所だ。これは、実は「Why Am I Tweeting?(私はなぜツイートしようとしているのか)」の頭文字を取った言葉で、この問いかけには立ち止まる人もいるだろう。
最近の例だが、私がグレタ・トゥーンベリに関する自分の記事へのリンクを投稿したところ、すぐにコメントが付いた。その人は、7分間の生産性向上ルーチンについて書いた私の本をいんちきだと言ってきたのだ。
なるほど? 本気か? 私が聞きたいのは、この人はどうやって私の本を5秒で読んだのかということだ。そして、それがグレタ・トゥーンベリといったい何の関係があるのかという点だ。
現状はこうだ。私たちがソーシャルメディアにせっせと投稿するのは、投稿できるからだと思う。これらのツールは驚くほど使いやすい。TikTok(ティックトック)の動画制作にはスマートフォンが必要だが、最近は誰もが持っている。コメントするには、ソーシャルメディアのアカウントと5秒程度の時間があれば良い。
ライオンズは、投稿したりコメントを付けたりする回数を減らすというアイデアも紹介している。想像してみてほしい。自制心を働かせ、我慢して、たまにはスマートフォンを置いて投稿しないことを。
この10年間と1日120億時間のソーシャルメディア利用から学べるのは、私たちは普段は自制心がなく、あまりにもしょっちゅう投稿してしまうということだ。
私たちには、本当に、それほどまでに言いたいことがあるのだろうか。ライオンズは著書の中で、こう結論付けている。私たちはまず、もっと耳を傾けることを学ぶべきであり、常におしゃべりしているのは、単にそれほどいうべきことがあるわけではないという証拠だと。
(forbes.com 原文)