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2023.03.30

“体験”こそがビジネスの種になる 世界で活躍するスタートアップ起業家の思考法

2月27日、28日にかけて、有楽町・東京国際フォーラムにて東京都主催のイベント「City-Tech. Tokyo」が開催された。世界最大規模のシティテックイベントに協賛するアメリカン・エキスプレスの顧客には、グローバルにビジネスを展開するSBO(スモールビジネスオーナー)も多くおり、同イベントに先立って、そのような起業家の事例をいくつか公開した。

今回は、その事例の中から特に若手起業家として注目を集める株式会社ビースポークの創業者で代表取締役社長の綱川明美にスタートアップが直面するグローバルビジネスにおける課題と、今後の展望について聞いた。


株式会社Bespoke(ビースポーク)は、AIチャットボットサービス「Bebot(ビーボット)」の開発・運用を行っている。インバウンド向けの多言語型AIチャットとして国内ホテルなどを中心に導入が進み、次第に成田空港や東京駅などのターミナル施設へと広がっていった同サービスは、現在、自治体や行政機関を含む国内外で数多く採用されている。

旅行好きで、ひとりで海外旅行をすることもあったが、そこでのさまざまな“実体験”が起業のきっかけになっているという。

「夏休みに東南アジアを旅したときに、いろいろと不便な思いをして、現地に知り合いがいたらこうはならなかったのに……と思ったことがたくさんあったんですよね。そうした経験から、最初の事業である旅人向けのコンシェルジュサービスを立ち上げました。

いまでも新しいサービスを開発するときは、すべて実体験がベースです。例えば、Bebotに災害時サポート機能を搭載したのも、2020年11月にオーストリアでテロに遭ったことがきっかけになっています。現地では基本的にドイツ語しか通じなくて、ニュースで情報も把握できなかったのでとても怖かったんですよね。そういった言語の壁がなく、自分の分かる言葉でAIがサポートしてくれるようになったらいいなと思ったんです」

綱川が持つ等身大の視点とビジネス実現へ向けた瞬発力は、SBOならではの強みといえそうだ。最近も自身の体験から新たなアイデアが湧き上がってきたという。それは、誰もが一度は感じたことがある役所の不便さを解消するイノベーションだ。

「いま作りたいのが“行かなくてもいい市役所”です。数年前に帝王切開で出産をしたのですが、産後まともに歩けないなか自分で役所へ出生届けを出しに行きました。体がつらい中で、長時間待たなければならず、非常に苦しい思いをしました。そのときに、市役所で最高のカスタマーサービスを受けましたという人はこの世に一人もいないんじゃないかということに気づいたんです(苦笑)。

待たされた、対応が悪かった、日本語しか通じない……など、つらい経験をした人は多いはずです。“ぴったりサービス”という役所での手続きをオンラインでできるサービスはあるのですが、インターネット屋さんの私でも使い方がわからないぐらい複雑。だからそこを変えて、誰にでもわかる普通のUI、UXのオンライン市役所を作りたいと考えています」

スタートアップならではの悩み
“支払い問題”と“労働環境整備”



新たな経験が発見を呼び、アイデアへつながっていく。綱川は現在進行でさまざまなひらめきをめぐらせており、「私がどこかに出かけるたびに、おかしなことをたくさんひらめいてしまうので、会社の人たちはみんな困っていますよ」と笑う。その、バイタリティーに満ち溢れた表情が印象的だが、一方で海外でのビジネスにはやはり苦労も多いようだ。


「一番頭を悩ませるのが支払いの問題です。日本の仕事は、日本円で請求書を発行して、その額で入金されます。ですが、海外では現地の通貨建てなので為替が動いてしまうと、案件スタート時に想定していた金額と大幅にズレた入金額になることがあるんです。

さらに、法務関連も複雑で、大体の場合でお客様側の契約書の雛形を使います。国によって慣習が異なるので、現地の弁護士さんを見つける必要がありますし、弁護士さんのレートもまったく違って、メール1通、電話一本単位でチャージされてしまうことも少なくありません。こういった資金面での問題は、グローバルビジネスをスタートアップするときの足枷のひとつになっているのではないかと思います。

また、当然ながら言語の壁もあります。外国語ができないとまずリクルーティングができません。ですから、いきなり行ったことない国や、慣れ親しんでいない国でビジネスを始めるなんてことは、なかなか難しいのです。その点でいえば私たちの場合は、スタート当初からスタッフの半分が外国人だったので、自然とグローバルな視野でビジネスを始めることができたのだと思います」

ビジネスが軌道に乗り、案件が増えることで支払いの問題も重たくのしかかった。取引先とのやりとりもさることながら、出張などの経費もかさみ、バックオフィスの強化が急務となったのだ。

「バックオフィス環境を整えるためにも、ビジネス・カードを導入することにしたんです。これによって、経費精算が格段に楽になりました。それまではレシートで経費を振り返っていましたが、ビジネス・カードに集約することで、『どこで何にいくら支払ったのか』、国内外に関わらずあらゆる支払い情報をデジタルで保管できるので、決算処理や会計士さんとの連携もスムーズになりました」

無論、スタートアップならではの悩みはバックオフィス関連だけではない。今は「従業員が働く環境を最適のものにする」という、起業家としての一大ミッションに向き合っている最中だという。

「たとえば育児休暇の制度を取り入れたいと思って調べてみると、“育児休暇”と“育児休業”とでは違いがあるとか、一年以上働いていないとダメだとか、正直あまり理解できないルールがたくさんあるんですよね。休職中の給与額にまつわる制度にも疑問があり、もっといい設計にできないかと考えている最中です。

社員一人ひとりをしっかりサポートしたいけれど、スタートアップ企業はものすごく体力があるわけではないから、どのようにバランスをとっていくのかは難しい問題だと思います。でも、私自身が過去に育児休暇をしっかりとらなかったことを後悔していて。子どもは一瞬で大きくなってしまうから、新生児の可愛かった時期になんで出張に行ったりしちゃったんだろうって。だから、従業員には育児休暇を絶対にとってもらいと思っているんです」

豊かな発想と行動力、社会課題への真摯な姿勢を見せる綱川は、東京都が掲げる「東京発のユニコーン数を5年で10倍、東京の企業数を5年で10倍にする」という目標を鼓舞する存在といっても過言ではないだろう。最後に自身のビジネスにおける展望を語ってくれた。

「たとえば、アメリカン・エキスプレスのカードが一枚あれば、世界のいろんな場所で、いろんな体験が一貫してできますよね。私たちはそれと同じことをAIチャットで実現したいと考えています。いったことのない場所や旅先、あるいは緊急時が発生したときに、現地の知り合いから受けるようなサポートをAIチャットで提供できればと思っています。私たちのサービスがあれば、世界中どこに行っても困らないという環境を作っていきたいので、これからもアイデアの創出を止めず、その実現に向けた努力を続けていきたいです」


綱川明美◎株式会社ビースポーク創業者、代表取締役社長。カリフォルニア大学ロサンゼルス校を卒業後、豪系投資銀行のマッコーリーキャピタルに入社。その後2015年に株式会社ビースポークを設立し、多言語自動会話のチャットボット「Bebot」を開発。政府機関や自治体、空港、ホテルなど、さまざまな業種業態にサービスを提供している。デジタル庁の臨時行政調査会で構成員も務める。



<イベント情報>
「City-Tech. Tokyo」
アメリカン・エキスプレがゴールドスポンサーとして協賛した、世界最大級のグローバルイベント「City-Tech. Tokyo」。東京都主催のもと、"自然災害や感染症、様々な社会課題に対し、独創的なアイデアや技術力をもつスタートアップ企業と、大企業や都市などとのオープンイノベーションが未来を拓く鍵となる"というテーマを掲げ、40カ国・地域から400近くのブースが出展された。スタートアップの起業家、投資家、経営者らの商談の場としても大きな盛り上がりを見せ、今後の展開にも大きな期待が抱ける成果となった。

・会期:2月27日、28日
・会場:有楽町・東京国際フォーラム

Promoted by AMEX / text by Hiroaki Morino / photographs by Tomohiko Tagawa / edit by Mao Takeda