食&酒

2023.03.17 16:30

地方創生は「食×ワイン」のケミストリーから始まる

前田氏はスペインの名レストラン『Asador Etxebarri』でスーシェフに上り詰め、独立を果たした。仁木氏が同店で修業を積んだという縁もあり、ワールドクラスの料理人によるコラボレーションが実現したという。

「スペイン人が北海道に来たら、どんなコースを創るんだろう──? スペインで料理を学んできた私は、旅人の視点で余市の食材と向き合いました。ジューシーな北島豚は旨みに満ちていて、マツカワガレイやホタテ、オニエビといった海の食材も野趣に溢れ、料理人の発想を飛翔させてくれました。スペインで初めての後輩として共に学んだ仁木シェフと、この地で厨房に立てる喜びを感じています」(前田氏)

両シェフが腕を磨いた『Asador Etxebarri』は、料理の熱源を薪の熾火から取る薪焼き料理が特徴だ。『Yoichi LOOP』にも特設の焼台がしつらえられ、すべての料理を薪火で仕上げた。通常はナラが用いられるが、前田シェフの発案で「ブドウの枝木」を薪木に採用。エネルギーも余市産という地産地消のフルコースが提供されていった。
『Yoichi LOOP』料理長の仁木偉氏(右)、『Txispa』オーナーシェフとして活躍する前田哲郎氏(左)。

『Yoichi LOOP』料理長の仁木偉氏(右)、『Txispa』オーナーシェフとして活躍する前田哲郎氏(左)。

前田氏、仁木氏が修業を積んだ『Asador Etxebarri』は豪快にして精緻な薪焼き料理で知られる。

前田氏、仁木氏が修業を積んだ『Asador Etxebarri』は豪快にして精緻な薪焼き料理で知られる。

唯一無二の体験がバリューを生む


「前田シェフが持ってきてくれた『UNICO 2012』はスペインワインの至宝と名高い逸品。その他、フランス南西地方の名ワインも合わせましたが、ドメーヌ タカヒコ、平川ワイナリー、NIKI Hills Wineryといった余市・仁木エリアのワインも堂々として、前田シェフ、仁木シェフの料理と絶好のマリアージュが実現しました。一杯のワイン、そして一皿の料理から無限のストーリーが始まるのです」(『LOOP』サービスマネージャー兼ソムリエ 倉富宗氏)

両シェフが絶妙のコンビネーションで仕上げていく料理は「つぶ貝 煎り酒 シードルと梅干し」「北島豚のチストラ」から「熟成牛のグリル 6歳 45日熟成」というクライマックスに至る10皿。

イノベーティブなディナーは世界と余市のワイン競演に寄り添い、道産食材の潜在力を最大限に生かす。全国から集まった60名の参加者は、北の大地と海がもたらす生命力、そして銘醸ワインの奥深さに魅了された。

「余市の誇りとも言えるワイン、そして余市や道産の食材たち。理想的なケミストリーが実現した夜になりました。余市のワイナリーはサステナブルなワイン造りを志し、生産者も余市発の食材に賭けて真摯な農業や漁業を続けています。双方の可能性が開花したイベントにできたのではないでしょうか」(仁木シェフ)
北海道出身でフランス国立トゥールーズホテル料理専門学校に学び、ソムリエ、フランス語通訳として活躍してきた倉富氏。2020年に開業したホテル『LOOP』のサービスマネージャー兼ソムリエを務める。

北海道出身でフランス国立トゥールーズホテル料理専門学校に学び、ソムリエ、フランス語通訳として活躍してきた倉富氏。2020年に開業したホテル『LOOP』のサービスマネージャー兼ソムリエを務める。

「Nana-Tsu-Mori Blanc de Noir MV」。余市で栽培されるピノノワールの最高峰として知られるドメーヌタカヒコのフラッグシップワイン「Nana-Tsu-Mori」よりもさらに希少な銘酒だ。

「Nana-Tsu-Mori Blanc de Noir MV」。余市で栽培されるピノノワールの最高峰として知られるドメーヌタカヒコのフラッグシップワイン「Nana-Tsu-Mori」よりもさらに希少な銘酒だ。

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文=佐々木正孝 写真=梁取只詩

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