「スペイン人が北海道に来たら、どんなコースを創るんだろう──? スペインで料理を学んできた私は、旅人の視点で余市の食材と向き合いました。ジューシーな北島豚は旨みに満ちていて、マツカワガレイやホタテ、オニエビといった海の食材も野趣に溢れ、料理人の発想を飛翔させてくれました。スペインで初めての後輩として共に学んだ仁木シェフと、この地で厨房に立てる喜びを感じています」(前田氏)
両シェフが腕を磨いた『Asador Etxebarri』は、料理の熱源を薪の熾火から取る薪焼き料理が特徴だ。『Yoichi LOOP』にも特設の焼台がしつらえられ、すべての料理を薪火で仕上げた。通常はナラが用いられるが、前田シェフの発案で「ブドウの枝木」を薪木に採用。エネルギーも余市産という地産地消のフルコースが提供されていった。
唯一無二の体験がバリューを生む
「前田シェフが持ってきてくれた『UNICO 2012』はスペインワインの至宝と名高い逸品。その他、フランス南西地方の名ワインも合わせましたが、ドメーヌ タカヒコ、平川ワイナリー、NIKI Hills Wineryといった余市・仁木エリアのワインも堂々として、前田シェフ、仁木シェフの料理と絶好のマリアージュが実現しました。一杯のワイン、そして一皿の料理から無限のストーリーが始まるのです」(『LOOP』サービスマネージャー兼ソムリエ 倉富宗氏)
両シェフが絶妙のコンビネーションで仕上げていく料理は「つぶ貝 煎り酒 シードルと梅干し」「北島豚のチストラ」から「熟成牛のグリル 6歳 45日熟成」というクライマックスに至る10皿。
イノベーティブなディナーは世界と余市のワイン競演に寄り添い、道産食材の潜在力を最大限に生かす。全国から集まった60名の参加者は、北の大地と海がもたらす生命力、そして銘醸ワインの奥深さに魅了された。
「余市の誇りとも言えるワイン、そして余市や道産の食材たち。理想的なケミストリーが実現した夜になりました。余市のワイナリーはサステナブルなワイン造りを志し、生産者も余市発の食材に賭けて真摯な農業や漁業を続けています。双方の可能性が開花したイベントにできたのではないでしょうか」(仁木シェフ)