ビジネス

2023.03.26 18:00

インド発「ブルートーカイ コーヒー」創業者が語る、仕事と成功と家族

ちなみに、マットは同社を創業する以前に2度、大きなビジネスにチャレンジしている。

「最初は、ルーマニアで何年かレストランを経営したのですが、うまくいきませんでした。その後、インドでビールを作ろうと思い、自家醸造に取り組みましたが、こちらもあまりうまくいかず、実際に醸造所を開くまでにはいたりませんでした」

2度の失敗はかなりショックが大きかったのではと訊くと、マットは意に介さない。再びあの優しい笑顔を交えながら。

「ビジネスにおいて失敗はつきものです。まあ今日失敗したとしても、明日はチャンスがあると思っていますから。さらに私自身、あまり失敗を引きずらないショートメモリーなタイプですから、ショックを受けなかった要因はそういう性格にもあると思います」

インドでは“世界三大紅茶”のひとつに数えられるダージリンの産地であるなど、圧倒的に紅茶文化が浸透している。

自国のコーヒーの魅力を広めたいという気持ちもわからなくはないが、長年に渡って培われた紅茶文化に割って入るには、ビジネスとしてはかなりリスキーだったはず。だが持ち前の性格からなのか、ここでもポジティブシンキング。

「確かに多くの人から『インドは紅茶文化だよ』とか『コーヒーにそんな高額は払わない』など、懐疑的な意見を多く言われました。でも私も妻もコーヒーが大好きで、私たちと同じようにコーヒーに興味を持っている人はきっとたくさんいるという自信があったのです」

インドコーヒーを日本の皆さんにも味わってほしい



’21年からは日本でも展開している。「日本のコーヒー文化は興味深いです」と言いながら……。

「日本には大きな可能性があると信じています。カフェを訪れる人が多い印象ですが、そこでインド産のコーヒーを味わう機会がほとんどないのが実情。

インドコーヒーならではの柔らかい酸味としっかりとしたボディ、そしてチョコレートフレーバーは今後、たくさんの方に好まれるのではないかと思っています。またサステナブルなコーヒー豆の生産など、インドコーヒーのストーリーを語ることで多くの魅力がより伝わるのではないかと考えています。

そして何より、日本のコーヒー文化はひとことでは言い表わせないほど多様性があります。最新のカフェだけでなくクラシックな喫茶店もあって、地下鉄に乗れば缶コーヒーを飲んでいる人もいる(笑)。そういった意味でもブルートーカイ コーヒーには、受け入れられるチャンスがあると思っています」

理想の男性像は、仕事と家族の時間のバランスをきっちり取れる人。その理由は、愛する我が子たちへの想いに通ずる。

「現在はどちらかというと妻のほうが子育てをしていて、私は子供たちとの大事な時間を失ってしまっているので、仕事と育児の時間を平等に分かち合えるような男性になることが理想です。今の状態のままだと、子供たちはおそらく妻のほうに懐いてしまい、私とは距離ができてしまうのではないか不安で……(笑)」

ふたりの娘さんは既にコーヒーを愉しんでいるか訊くと「まだ大嫌いみたいです(笑)」と、残念そうに。
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文=オオサワ系 写真=山本雄生

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