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2023.03.28 16:00

DXを本気で進めたい中小企業の熱意と“ハンズオン支援の神髄”がつながることで生まれる化学反応

企業の「DX」を推進する役割として重要視されているCIO(Chief Information Officer)。

CxO制度を敷かない中小企業であっても、実はこのCIO人材の確保は必須だと言われている。それはなぜか?

このIT人材難の時代に、どのようなアプローチが必要なのか。中小企業に対する「戦略的CIO育成支援事業」を推進する独立行政法人中小企業基盤整備機構九州本部のキーパーソンへのインタビューを通じ、中小企業におけるCIOの存在意義について考えてみたい。


中小企業にCIOは必要なのか?

「DX推進」というキーワードが世の中を賑わすなか、自社の経営理念、経営戦略に沿った情報化戦略の立案、実行を担うCIO(Chief Information Officer)の役割がクローズアップされている。

ところが、そもそも論として“CIOのような専任役員を任命できるのは、一部の大手企業だけ。人材に余裕のない中堅・中小企業にとっては、現実味の薄い話ではないか”と感じている経営者も少なくないのではないだろうか。

「2021年度版の中小企業白書によると、『デジタル化の取り組みを統括できる人材』を確保できていない中小企業は全体の55.2%を占め、統括できる人材がいる場合でも、それがCIO等の経営層だと回答した企業はわずか35.6%という結果に。つまり残りの65%は経営にコミットしない、その他レイヤーであるということを意味します」というのは独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)九州本部の金子英里子。

管掌エリアである九州地区においては、その傾向はさらに顕著に表れているという。周囲を見渡してみても、実際にCIO職を配置する中小・中堅企業はなかなか見当たらない。しかし、DX推進にあたっては、組織規模や業種業態にかかわらず、CIOの存在は必要不可欠だという。

「経済産業省が定義する『DX』とは、ITを単なる道具として活用することではなく、生産性の向上やビジネスモデルの変革、そして働き方の改革につなげるもの。経営課題を認識し、その経営課題をITの力でどのように解決し、変革していくのかを考え、実際にプロジェクトを回していくのがCIOの役割です。人手が少ない中小企業こそDXが必要で、その推進役としてCIOの存在が重要になります」(金子)

15年に渡り磨き続けられたハンズオン支援の神髄

経営と現場をつなぎ、組織全体を見渡せるCIOがいなければ、DXは進まない。それだけ重要な役割なのだと理解はできるが、“IT人材不足”が叫ばれるなか、外から新たな人材を採用するのは難しい。であるなら、既存社員の中からCIOを育成していこうと考え、生まれたのが「戦略的CIO育成支援事業」だ。単なる学習機会を用意するのではなく、実際になんらかの業務システムを導入するまでの間、ハンズオンで支援を続け、その体験を通じてCIOを育成するという、きわめて実践的な内容になっている。

「CIOを任命してシステムを導入するということは、単なるツールの導入ではなく、企業のビジネスの仕組みを変え、経営の最適化を目指すことを意味しています。社内プロジェクトを立ち上げ、リーダーやサブリーダー的な位置づけでCIO候補を巻き込むことで、中小機構が派遣したアドバイザーのノウハウを吸収していただきます」というのはハンズオン支援を担当する管理者の中山小百合。

自力で業務改善を進め、なおかつ自分たちの手で提案依頼書(RFP)を作成。開発会社に説明をして見積もり取得、開発パートナー選定までの流れを一通り経験させる。

「開発会社に『○○なシステムを作りたい』と投げて、返ってきた要件定義書が、自分たちの思っていたものと全く異なっているということは往々にしてあるかと思います。ラフなものを投げれば投げるほど、開発会社との認識の乖離が大きくなり、やがて取返しのつかないことにもなりかねません。中小機構では、企業自らが現場の意見を吸い上げながら現状の業務フローを把握し、システムでどのように業務を変革したらよいのかを考え、RFPにアウトプットするところをサポートしています」(中山)

重要なのは“自走”すること。自分たちのシステムの中身がどのようなものなのかを知ったうえで、自分事としてとらえる必要があると、支援事業全体を取りまとめるシニアアドバイザーの三戸宏昭はいう。

「それができなければ、新しいシステムを運用することができません。なので、CIO候補ひとりにフォーカスするのではなく、必ず社内でプロジェクトチームを結成し、体制を作ってもらったうえで支援をします。一方の私たち機構側もシニア中小企業アドバイザー、管理者アドバイザー、中小機構職員、派遣アドバイザーの4名体制でチームを組んで対応しています」(三戸)


中小機構のハンズオン支援体制。職員と専門家による支援チームで丁寧にサポートしている

用意する支援メニューは2つ。入口的な位置づけとなる「CIO-B型」は、IT化推進計画の策定を支援するものだ。

「システムで効率をあげたい、生産性をあげたいという、ふわっとしたニーズに対し、現状分析・ヒアリングしながら具体的に理想の形を描いて落とし込んでいくもので、サポート期間は4か月程度となります。現状分析及び課題抽出、情報化構想の検討を経て、IT化推進計画の策定までをカバーします」(金子)

一方、IT戦略や開発方針が明らかな場合に提案している支援メニューが「CIO-A型」だ。業務・システムのあるべき姿を明確化した上でIT導入計画を策定し、提案依頼書(RFP)作成、開発会社選定、システム開発・導入・運用までをカバーする。

CIO-B型と組み合わせた場合、約2年半にわたってサポートするケースもある。開発会社選定後のプロジェクト管理・導入・運用まで伴走支援することで、導入後のカスタマイズ等に向けた要求整理についても自らの手で実施できるよう、自走化を支援する。

「DXにおける課題は大きく分けて2つあります。ひとつはDX人材がいないこと、そしてもうひとつがDXの取り組みが途中で止まる、失敗することです。なぜ止まるかというと、“現場が理解してくれない”“現場がITと聞くだけで逃げてしまう”など、問題を自分事にしないからと考えます。それを防ぐために全社横断で現場の方の意見を引き出しながら仕組みを定着、浸透させるプログラムになっています」(中山)

中小機構には、中小企業の支援に特化した公的機関ならではの強みがあるという。それは、15年の長きにわたって培ってきた支援ノウハウの蓄積と東京本部及び全国9か所の地域本部で構築される職員・専門家のネットワークである。

「中小機構は国の中小企業政策の中核的な実施機関として、中立的な立場で中長期的な伴走型支援が可能です。そして地域をけん引するような成長期待企業への支援を通じてモデル事例を取りまとめ、展開することで、地域における中小企業支援の裾野を広げたいという思いを強く持っています」(金子)

「私たちが考えるハンズオン支援の真髄とは、プロセス支援そのものです。例えば水不足で悩んでいる地域に対して専門家が井戸を作って水を与えたとしても、専門家が去ってしまえば井戸はもう作れず、水不足は一時的に解消するだけです。一方で、専門家が井戸の作り方を教えてあげれば、専門家が去った後も自分たちで井戸を作り水を確保できる。これが中小機構が実践するハンズオン支援の考え方です。」(金子)

最終目標はCIOの育成ではなく、いかに経営課題を解決するか。だからCIO育成を通じてDX推進のプロセスを支援し、自走できる組織へと変えていく。井戸を自らの手で掘ることで、永続的に水源を確保できる。

「支援期間を終え、私たちがいなくなった後、新たな課題が出てきたときに、プロジェクト活動で体感した解決フロー、アドバイザーが共有したノウハウやフォーマットを活用し、自社の力で課題解決を図っていただきたいと考えています。それによって継続的な成長・発展につなげていただくことを期待しています」(金子)

プロジェクトメンバーが成長することで確実に会社は進化する

戦略的CIO育成支援事業により、全国で年間80社強の企業を支援し、実際に生産性向上に向けた成果があがりつつある。生産性を向上させるには「業務効率化によりコストを下げる」「売上拡大につなげる」という2つのアプローチが必要になるが、ここでは業務効率化に向けたDX支援と売上拡大に向けたDX支援、2つの事例を紹介したい。

長崎県松浦市に本社工場を構える株式会社 稲沢鐵工は、屋内外のスチール階段を製造販売する会社。パーツで組み立てて全国へ配送する事業を展開する。今回のプロジェクトでは、屋内用のスチール階段を製作する事業を対象としており、営業が受付をして、設計し、製作・塗装・梱包・出荷するまでのフローをすべてシステム化し、業務効率化を図ろうと考え、支援を依頼したという。

「当初は、営業と製造間でリアルタイムに情報を共有化したいというニーズがあったのですが、ヒアリングを進めていくうちに、発注が伸びているのにオペレーションが追いつかない状況が浮き彫りになったようです。そこでシステムを導入しリソースを効率的に回し、原価削減を行い、さらに業務効率化を実現させたいと考えました」(中山)

支援の中では長い時間をかけて全社ヒアリングを実施。課題抽出と解決策について議論を重ねた。50件ほどの課題を抽出し、アドバイザーがファシリテートして議論をリードし、このうちシステムで解決できることは何か、システム化することで、どれぐらいの作業時間を削減できるのかを算出したという。

「まずは管理者が経営課題と支援ニーズを複数回ヒアリングして分析し、最適な支援計画を策定。合わせてシニアアドバイザーと職員に相談しながら最適な派遣アドバイザーを決めていきました。稲沢鐵工様の場合は製造業でかつ工程管理が非常に重要であることが見えていたので、その点に詳しい専門家をアサインしました」(三戸)

2021年の12月にプロジェクトがスタートし、現在は第3期に突入。2023年の4月から開発がスタートする予定。時間を経るごとに参加意識が高まり、全員参加型のプロジェクトになっていったという。組織カルチャー自体も変わった。しかも、プロジェクトを通じて育成しようとしているCIO候補者は若手社員だ。

「後継者育成の一環として、若いうちに業務フローの見直しや全体把握にも参画してもらいたいという社長の意向を汲みました。社長からは『プロジェクトメンバーが成長しており、わが社は進化している』という嬉しいコメントをいただいています」(中山)
 
 中山(中央)と稲沢鐵工のプロジェクトメンバー

一方、売上拡大に向けてDXに取り組んでいるのが、大分県国東市のくにみ農産加工有限会社である。バジルの露地栽培では国内トップ企業であり、フライドオニオン等のフライ製品など、高付加価値の加工野菜原料を製造する食品メーカー。

今回は、バジルペーストの生産工程において、その原材料の仕入れ先である農家に無料で提供するバジルの栽培管理システムのリプレイス支援を依頼したという。

「8年前に作ったレガシーシステムを改良し、高品質な国産原料を加工する企業として、安心・安全な説明責任を果たせるシステムにしたいというお話でした。システムの改良によって農業の高度化・生産性の向上につなげ、少しでも多くの良質なバジルを沢山の農家の方に育ててもらいたいという目的でスタートしました」(中山)

支援の中で、スコープが拡大。バジルだけでなく、オニオンや大葉など様々な野菜の栽培管理ができるシステムを構築し、将来的にクラウドシステム自体を販売していこうという話にまで発展した。

「社長にとっては、スマート農業への挑戦の第一歩となったプロジェクトです。現在は契約農家や農協含めて130の農家に提供。システムの改良によって農業の高度化・生産性の向上につなげ、将来的には作り手から消費者までを特定できるトレーサビリティシステムへ成長させていこうという目標を持っています。私たちも“農業IoTモデル”の事例として、地域を代表するクラウドシステムに成長させたいという思いを抱きながら、取り組んでいます」(中山)

CIO候補となったリーダーが1期目のプロジェクト終了後、「これまで開発会社に対していかに無茶なことを言ってきたかがようやく理解できました。脳みそが変わったと思うほど、人生最大の仕事でした」とコメント。その言葉通り、支援による活動を重ねるごとに自信がつき表情が変わるのが手に取るようにわかったという。

「プロジェクトメンバーから自発的な質問が増えるなど、企業様としての成長が非常に感じられるプロジェクトとなりました」(中山)

くにみ農産加工における開発会社選考会の様子

今回の2つの事例の成功要因はどこにあるのか。関係者が口にするのは“熱意”というキーワードだ。

「企業側でいえば、社長のコミットメントが重要です。社長が本気でやりたい、変えたいという熱意があることとメンバーがそれについていこうという気概があってメンバーが熱心になっていると成果につながりやすいですね。もちろん私たちも必死にサポートします」(金子)

中小機構九州本部でハンズオン支援に携わるメンバー。企業の熱意に応えるべく、全力のサポートを行う

企業の熱意と派遣アドバイザーの知見、そしてハンズオン支援という中小機構が長きにわたって作ってきた仕組みの3つがつながったときに化学反応が生まれる。中堅・中小企業が生き残っていくために、本質的なDXは必須で、それは待ったなしの状況にある。心強い専門家の力を活用して、その第一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

中小機構 戦略的CIO育成支援事業
https://www.smrj.go.jp/sme/enhancement/hands-on/01.html

(メイン写真左より)
三戸宏昭(みと・ひろあき)
◎いすゞ自動車で新エンジンの工法企画/生産ラインの企画・量産展開後、九州松下電器(現パナソニック コネクト社)に入社。国内外の工場建設・生産ラインを展開。2021年より中小機構九州本部のシニアアドバイザーとしてハンズオン支援事業の実務全般を統括。

中山小百合(なかやま・さゆり)◎IT業界で2度にわたりAI開発会社を創業し、M&Aを経験。東京から福岡にUターンしたことを契機に、2017年より中小機構のアドバイザーとして伴走型支援に携わり、2021年よりハンズオン支援事業の管理者として支援に従事。

金子英里子(かねこ・えりこ)◎2002年中小機構の前身である地域振興整備公団に入団。2004年中小機構設立後は、まちづくり支援や中小企業大学校東京校での研修企画等に携わり、12年より九州本部勤務。着任後は主に新事業支援を担当し、20年4月より現職。中小企業診断士。

Promoted by 中小企業基盤整備機構 / text by Akihiro Ito

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