PFASは水をはじき、くっつきにくい性質があり、1940年代からさまざまな日用品で採用されてきた。フッ素樹脂コーティングされたフライパン、撥水(はっすい)加工された服、ピザ箱などの食品包装、マスク、化粧品などに使われている場合がある。
半面、PFASは炭素とフッ素が強力に結びついているため自然界で分解しにくく、環境に残ったり飲み水を汚染したりしやすい。そのため「永遠の化学物質」とも呼ばれる。
PFASへのばく露は、確実な検出が難しいほどの低い水準であっても、有害で人体を危険にさらす可能性がある。米疾病対策センター(CDC)などによると、これまでの研究で、PFASへのばく露と免疫機能の低下、腎臓がんや精巣がんなどとの関連性が示されている。
このほか、女性の受精能力の低下や妊婦の高血圧症、子どもの発育障害、自然なホルモン分泌の阻害、コレステロール値の上昇とも関連づけられている。
PFAS汚染はまん延しているとみられる。CDCによると、米国で1999〜2000年に採取された血液サンプルでは98%からPFASが検出された。また、世界の330種あまりの動物からも検出されており、研究では動物も人間と同様の健康被害を受ける可能性が示されている。
2000年代以降、一部のPFASについては製造段階での使用が段階的に廃止されてきたため、それらの物質に関しては血中濃度も下がってきている。また素材大手の米3Mは昨年、PFASの製造を2025年末までに打ち切る方針を明らかにしている。
EPAの水担当幹部であるラディカ・フォックスは、今回の規制値案は「根本的な変化」をもたらすと強調した。EPAの見積もりでは、国内で約1億人のPFASばく露が減る可能性があるという。
ジョー・バイデン政権は飲み水に含まれるPFASの濃度を制限する案を支持しており、2021年10月にEPAや国防総省、食品医薬品局(FDA)などの連邦機関によるPFAS汚染対策計画を公表した。昨年6月にはEPAが一部のPFASについて健康勧告を出すことや、超党派インフラ法を通じて飲み水の「PFAS汚染の最前線にあるコミュニティーへの支援」に10億ドル(約1300億円)を拠出することを明らかにしていた。
一部の州はすでにPFASを規制する法律を制定している。ウィスコンシン州が昨年2月、飲み水のPFAS濃度に制限を設けたほか、メーン州は2021年7月、PFASの使用を2030年までにあらゆる製品で禁止することを決めている。
(forbes.com 原文)