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2023.03.31

匠の技はAI活用によって後世に継承できるのか〜竹中工務店とPwCコンサルティングが挑むナレッジ活用の可能性

「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という経営理念を掲げているのが竹中工務店だ。これまでに東京タワーや東京ドーム、高さ日本一(地上300m)を誇るあべのハルカスなど、各地にランドマークを建設してきた。同社はいま、PwCコンサルティングとのパートナーシップにより、AIを用いて社内の暗黙知を形式知に変えていく取り組みに挑んでいるという。そのプロジェクトの推進者たちから話を聞いた。



——竹中工務店とPwCコンサルティングによるAIを活用した取り組みについて、まずはその概要から教えてください。

PwCコンサルティング データアナリティクス シニアマネージャー 沼田裕明(以下、沼田):少子高齢化の時代を迎えて、労働者人口が減り続けていく潮流にあるなか、高技能者の知見が失われてしまうのは日本にとって大きな痛手となります。いわゆる“匠”の「暗黙知」を「形式知」に変換し、後世に技能を継承していくためにスタートしたのが竹中工務店様のプロジェクトです。

竹中工務店 生産本部 生産BIM推進グループ グループ長 山崎裕昭(以下、山崎):1610年、竹中藤兵衛正高が尾張・織田家の普請奉行から転じて寺社仏閣の造営を主業とする工匠の道に入ったことにより、竹中工務店の歴史はスタートしています。すなわち、「匠の技能を継承し続ける」という想いは、400年以上前から竹中工務店が抱えてきたアイデンティティの一部であると言えます。PwCコンサルティングのご提案により、そうした強い想いと現代の利器であるAIを融合させようとしたのが、今回のプロジェクトになります。

山崎裕昭 竹中工務店 生産本部 生産BIM推進グループ グループ長

山崎裕昭 竹中工務店 生産本部 生産BIM推進グループ グループ長


——竹中工務店のなかで、生産本部というのはどのような部署になるのでしょうか。

山崎:生産分野における全社的方針の企画と統制を行っている部署で、生産に関する安全・品質・コンプライアンスといった私たちの企業活動の基盤を支える業務を担っています。竹中工務店がお客様や設計事務所、協力会社の方々に提供する価値の安定化・最大化に向けて、ルールを定めたり、情報のハブになったりしています。

竹中工務店 生産本部 生産BIM推進グループ 主任 石川晃一(以下、石川):近年の大きなトピックスである働き方改革や技能者不足に対応するため、デジタル技術を活用しながら、生産性向上や事業運営の効率化による改革を進めているところです。

山崎:生産活動全般にわたる業務改革である「竹中新生産システム」やBIM(Building Information Modelingの略称。コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した3次元デジタルモデルをコンピューター上に作成し、そのデータベースを建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で活用していく)の展開などにより、徹底した業務の効率向上を図っています。

——やはり、建設業界においても「デジタル化」が喫緊の課題になっているのですね。

山崎:かつては、リアルな建物の造り方を工夫することで生産性向上に務めてきました。例えば、「オフサイトで先に組み立ててから現場に運ぶ」などです。そうしたフィジカル起点の改革は、すでに一定の効果をもたらしています。現在は、デジタルを起点にした改革により、私たちの業務をいっそう進歩させていくことが急務となっているのです。

現場での検証により、AIの可能性を実感できた

——いまは、デジタル起点の推進において、その速度と確度を高めている最中ということですね。それらを遂行していく際、「AIを用いたデータ利活用の高度化は欠かせないものである」ということになるのでしょうか。

山崎:そうですね。BIMを使った仕事のプロセスのなかに、PwCコンサルティングにご提案いただいたAIプロジェクトを入れ込んでいくことが将来的には有用であろうという判断です。そういう視座をもって現在行っているBIM推進活動を遂行していきたいと考えています。

沼田:私たちは、PwCコンサルティングのテクノロジーコンサルティングの部門に所属しています。その部門において、私たちはデータ&アナリティクスを専門に活動しているのですが、今回は「建設業界のデータ=詳細な知見を使って何ができるのか?」という問いへの最適解を探していると言えます。

石川:生産本部では、工事品質のさらなる向上を目指して、お客様や協力会社と共に蓄積してきた施工ノウハウを形式知化し、組織的ナレッジへ変換し活用しようという取り組みを以前から進めてきました。

竹中工務店 生産本部 生産企画部 主任 藤井康平(以下、藤井):今回のプロジェクトでは、竹中工務店が長い年月をかけ蓄積してきた生産領域の膨大なデータの、何を、どのようにAIで整理・活用するかというところから始めています。

(左)藤井康平 竹中工務店 生産本部 生産企画部 主任 (右)石川晃一 竹中工務店 生産本部 生産BIM推進グループ 主任

(左)藤井康平 竹中工務店 生産本部 生産企画部 主任 (右)石川晃一 竹中工務店 生産本部 生産BIM推進グループ 主任


——今回のプロジェクトのターゲットを教えてください。

石川:今回の取り組みで誰をいちばんに助けていきたいかという意味では、作業所で働いている施工管理者になります。日々、現場の監督として忙しく仕事をしているなかで、社内に蓄積された多くのナレッジから、その時々の状況において有用な知識や情報を探し出すのは時間的にも労力的にも大変です。施工管理者が抱えているそうした課題を、AIを活用したナッジ(「肘でつついて、ある方向に後押しする」という行動科学の用語)型でのアプローチも意識しながら、ナレッジの活用により解決したいと考えました。このプロジェクトに私がアサインされたのは、つい最近まで私も施工管理者として課題にぶつかってきたからだと思っています。

PwCコンサルティング データアナリティクス アソシエイト 洞口勇太 (以下、洞口):必要なときに必要な情報を届けてユーザーの気づきにつなげる、ナッジ型での情報配信が役に立つと考えたときに、山崎様、藤井様、石川様のお三方に豊富な現場経験があるということがプロジェクトの推進力となっています。

藤井:AIを活用したデータ整理をするにあたり、使用可能データの選別や、ルール設定、加工など、PwCコンサルティングから、いろいろなアドバイスを受けながら進めている状況です。現在はPOCに向けての試行段階ですが、高い精度と迅速なスピード感でプロジェクトが進行できていると感じています。このプロジェクトを通し、AIとの適切な付き合い方を把握し、ナレッジ活用の有用性について検証できました。

(左)沼田裕明 PwCコンサルティング データアナリティクス シニアマネージャー (右)洞口勇太 PwCコンサルティング データアナリティクス アソシエイト

(左)沼田裕明 PwCコンサルティング データアナリティクス シニアマネージャー (右)洞口勇太 PwCコンサルティング データアナリティクス アソシエイト


——データ分析においては、具体的にはどのようなことをしていくのでしょうか


洞口:データ分析は、受領した非定型データを定型フォーマットに展開することから始めました。社内の知見が詰まった文書を分析しやすい構造化データにし、ナレッジデータベースにまとめます。当然ながら、業務のプロフェッショナルに対してヒアリングを行っています。どういった観点で現場をとらえ、どのようなアドバイスをしているのかをお聞きして、データを分析する際に大切なポイントを押さえるようにしました。

藤井:私たちも沼田様や洞口様と対話を重ねながら、処理の速さや正確性を共に高めていきました。今回のプロジェクトを通し、コンサルとの連携に大きな価値を感じているところです。PwCコンサルティングとの連携により、アナログではなし得ないスピード感で既存データを誰もが使いやすい状態にでき、AIの可能性を実感しています。
私たちは人間の暮らしや命を支えている建物を造っています。それは寸分のミスも許されない仕事です。AIの実態をとらえることができたいま、「今後は、堅実性を担保しつつも、こうした仕組みを適切に取り入れ、生産性向上を加速させるべき」と確信しています。


知見の掛け合わせにより、イノベーションは生まれる

——これからのプロジェクトの方向性について教えてください。

石川:試験的な運用を行いながら、有用性を高めていきます。PwC様との対話を重ねることで、現在のAI技術活用の知見が広がり、社内の既存システムとの連携など実用性も考慮した複数のユースケースを見出すことができました。ターゲットにとっての価値や実行可能性も踏まえて検討を続けていきます。またナレッジを埋もれさせずに有効的に活用するには、データを整形して蓄えることがとても重要なポイントであることも認識しています。今後についての課題も理解できました。「AIの活用が生産性や品質の向上につながる」と感じていますので、人がやるべきこと、人にしかできないことをよりサポートできる体制を構築しつつ、AIと上手に付き合っていけたらと考えています。

山崎:現場においては、職人さんにしかできないことがあります。そのため、労働者人口が減っていくこれからの時代においてこそ、職人さんたちの価値が相対的に上がっていきます。仕事をお願いする私たちが社内のナレッジをしっかりと整理されたデータにしていくことにより、職人さんが本来するべきことをより明確にする。そうすることで、さらに職人さんの存在自体の価値を上げ、それが品質の向上にもつながっていくのです。こういった活動を持続的なモノにしていくために、これからもアジャイルに、柔軟に物事を捉えながらプロジェクトを進めていきます。

藤井:創業から400年を超える事業活動のなか、蓄積された多くの経験や技術はまだまだ属人性が高く、形式知化されていないナレッジが多くあります。これからの建設業の未来を明るく、よりよくしていくためにAIの活用は必須です。今後の活用の可能性としては、現場で撮影した画像から、AIが次の工程をサジェストしていくなど、さまざまなことが考えられます。

沼田:私たちは、これからも現場のプロフェッショナルの間で暗黙知となっているノウハウを形式知にしていく取り組みを進めていきます。そうした試みを繰り返していくなかで、新しい提案を行い、イノベーションを起こしていけたらと考えています。今後においても、少子高齢化や人口減少といった社会課題に立ち向かえるようなソリューションを提供していきたいですね。

山崎:いまは個人や個社に閉じてしまっていては成長ができない、イノベーションが生まれない時代になっていると強く感じています。今回のように建設業界のプロフェッショナルとテクノロジーコンサルティングのプロフェッショナルがお互いの知見を持ち寄ることにより、かつてない成果が生み出されようとしていることは、この時代においてとても意味のあることだと思います。AIのプロジェクトを通して、コミュニケーションの大切さ、他者とつながることの大切さを感じることができた。そういったこともイノベーションと言ってよいのではないかと感じています。


関連リンク

PwC データアナリティクス
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics.html

PwC AIガバナンス導入支援
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics/responsible-ai.html

AIを経営の中枢へ-「AI経営」
https://forbesjapan.com/feat/pwc_community/

テクノロジー最前線 - 先端技術とエンジニアリングによる社会とビジネスの課題解決に向けて
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/technology-front-line.html

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