2月のCPI上昇率は2021年9月以降で最も小幅となり、市場予想と同じだった。4月は6.4%の上昇だった。
全体の物価の最大の押し上げ要因になったのは家賃で、伸び率の70%を占めた。このほか食品や娯楽、家具などの値上がりも上昇圧力になった。
米国では10日にSVB、12日にシグネチャー銀行が突然破綻した。流動性をめぐる懸念から連鎖破綻の不安が生じたため、FRBや米財務省などは両行の預金を全額保護する措置などの導入を余儀なくされた。
投資助言会社デビア・グループのナイジェル・グリーン最高経営責任者(CEO)は「SVBの(預金者)救済策は実質的には新しいかたちの量的緩和だ」とみている。
量的緩和は金融システムの安定化や景気の下支えのために国債などを大量に購入する金融政策で、米国ではサブプライムローン危機に端を発する「グレートリセッション」や新型コロナウイルス禍への対応で実施された。
米金融当局が12日に発表したスキームでは、FRBが「銀行ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」と呼ぶ貸し出し制度を創設し、金融機関が米国債などを担保として最長1年の融資を受けられるようにした。BTFPには財務省の「為替安定化基金(ESF)」から最大250億ドル(約3兆3700億円)の保証が提供される。
グリーンはこの仕組みについて、事実上ドルの流通量を増やすものであり、ドルの購買力を低下させ、ドル安に振れやすくする可能性があると指摘している。
セブンス・リポートのアナリスト、トム・エッセイも「政府は預金者を保護することで危機の大部分を回避した」とする一方、危機がごくわずかな銀行だけにとどまることになれば、こうした措置はインフレを誘発するものになるだろうと述べている。またBTFPについては、バランスシートの縮小に積極的に取り組んでいるFRBの最近の行動と逆行するものになるとも解説している。
FRBは来週21〜22日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。FRBが銀行業界の苦境にどう反応するかはまだ見通せないが、会合では混乱へのなんらかの対応を余儀なくされそうだ。
今回の危機が起こる前の時点では、FRBは3月のFOMCで0.5ポイントの利上げを決め、利上げペースを再加速すると予想する市場関係者が多かった。だがSVBの破綻を受けて、ゴールドマン・サックスなどの金融機関が相次いで今回はいったん利上げが見送られそうだとの見方を明らかにしている。
(forbes.com 原文)